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医療情報 28.7/1(金)

2016.07.01

今週も医療に関するお得な情報をお知らせ致します。

◆ 医療事故調見直し 支援団体連絡協議会を全国に設置
厚労省 制度一部改正 都道府県に1カ所、中央に1カ所設置

――厚生労働省
厚生労働省6月24日付で、支援団体が情報共有などを行う「支援団体等連絡協議会」を都道府県に1カ所、中央に1カ所設置することや、遺族などからの相談対応の充実を盛り込んだ医療事故調査制度の改正を行った。同日付で省令、医政局長、同局総務課長の通知を発出した。本改正では各病院等に対し、死亡および死産事例が発生した場合、当該病院等の管理者に遺漏なく速やかに報告される体制の構築も求めている。医療事故調査制度は2015年10月から開始された。

医療事故調査制度の見直しについては、6月9日に開かれた社会保障審議会医療部会で改正の方針が打ち出されていた。支援団体や医療事故調査・支援センターが情報や意見を交換する場として、「支援団体等連絡協議会(仮称)」を制度的に位置付けるほか、同センターが遺族等からの相談内容を医療機関に伝達する枠組みを設けるなどの「改善措置」(5項目)を講じることとし、6月24日の「医療法施行規則の一部を改正する省令」の公布・施行へと連結する。

今回の改正内容を詳しく見ると、病院等の管理者が行う医療事故報告と医療事故調査等支援団体による協議会の設置の2本柱を定めている。また厚労省は同日付で、2つの関連通知を発出し、内容や留意事項を周知している。

改正では、医療事故報告について、病院等の管理者は死亡・死産事例の発生が病院等の管理者に遺漏なく速やかに報告される体制を確保すると定めている。また、遺族らから医療事故が発生したのではないかと申出があり、医療事故に該当しないと判断した場合、遺族らに対して理由をわかりやすく説明することとしている。
また、「協議会設置」について、医療事故調査等支援団体は、支援を行うにあたり必要な対策を推進するため、共同で協議会(支援団体等連絡協議会)を組織することができると定めた。
具体的には、協議会で病院等の管理者が医療事故に該当するか否かの判断や、医療事故調査等を行う場合に参考とすることができる標準的な取り扱いについて意見交換を行う。また、協議会は地方組織として各都道府県の区域を基本に1カ所、中央組織として全国に1カ所設置することが望ましいとしている。
この地方協議会には都道府県に所在する医療事故調査等支援団体が参画し、全国に設置される中央協議会には全国的に組織された支援団体や医療事故調査・支援センターが参画すると定めている。

このほか、通知では、医療事故調査・支援センターが支援団体や病院等に対して、医療事故調査などに関する優良事例の共有や研修を協議会と連携して実施するとした。また、センターに対して遺族等から相談があった場合、求めに応じて相談の内容などを病院等の管理者に伝達する。さらに、再発防止策の検討を充実させるため、病院等の管理者の同意を得て、必要に応じて、医療事故調査報告書の内容に関する確認・照会等を行うとした。

◆ 病院は前年比0.2%減の642施設、有床診は14.1%減の431施設
東京都 「平成26年 医療施設(静態・動態)調査・病院報告」

――東京都福祉保健局
東京都福祉保健局は6月21日、2014年(平成27年)11月に厚生労働省が公表した「平成26年医療施設(静態・動態)調査・病院報告」の結果をもとに、東京都分を集計して公表した。
調査の目的は、全国の医療施設(医療法に定める病院及び診療所)の分布及び整備の実態を明らかにするとともに、医療施設の診療機能を把握し、医療行政の基礎資料を得ることを目的とする。

 調査の対象
静態調査は、調査時点で開設している全ての医療施設を対象とする。動態調査は、開設・廃止等のあった医療施設を対象とする。
 調査の種類、期間及び期日
静態調査は、3年に1回実施し、今回は平成26年10月1日現在の調査結果である。動態調査は、3年ごとの静態調査の結果に、毎月、医療施設の開設、廃止等の件数を加減し、医療施設の状況を把握するものである。今回は平成25年10月1日から平成26年9月30日までの調査結果である。

今回の東京都調査結果では、病院数、歯科診療所数が減少し、一般診療所数は増加。病院での一日平均患者数は在院、外来とも減少したことなどが明らかとなった。

療養施設調査は、病院・診療所の分布や整備実態を明らかにし、診療機能を把握するもの。他方、病院報告は病院と療養病床を有する診療所の患者の利用状況などを把握するもの。
医療施設調査によると、種類別の施設数は、病院が前年に比べ4施設・0.2%減少し、642施設だった。1981年をピークに減少傾向が続いていたが、近年は横ばいとなっている。
また、一般診療所は同22施設・0.2%増加の1万2,780施設で、このうち有床診療所は同71施設・14.1%減少の431施設、無床診療所は同93施設・0.8%増の1万2,349施設で、有床診療所が大幅に減り、無床診療所が増えている。
診療科別(重複計上)では、一般病院は内科が541施設(一般病院全体の91.4%)と最も多く、次いで整形外科385施設(同65.0%)、リハビリテーション科370施設(同62.5%)、外科355施設(同60.0%)の順だった。
一般診療所は、内科が7,833施設(一般診療所全体の61.3%)と最多で、小児科2,587施設(同20.2%)、皮膚科2,428施設(同19.0%)、消化器内科1,969施設(同15.4%)と続いている。

種類別の病床数は、病院が前年比で529床減少し、12万7,110床。内訳は、一般病床が8万1,125(同295床減)、精神病床が2万2,612床(同429床減)、療養病床2万2,708床(同276床増)という状況。一般診療所は前年比201床減の4,285床だった。
病院報告を見ると、病院の1日平均患者数は前年比396人・0.4%減少して10万1,526人。1日平均外来患者数は前年比2,459人・1.7%減少して14万3,510人。病院の平均在院数は前年より0.4日短縮。

調査結果の主な内容(医療施設――静態・動態)
病院:病院施設数
4施設減少して642施設(前年 646施設)。昭和56年をピークに減少傾向が続いていたが、近年はほぼ横ばい。
診療所:一般診療所施設数
22施設増加して12,780施設(前年 12,758施設)。平成2年以降増加傾向が続いている。
歯科診療所施設数
68施設減少して10,579施設(前年 10,647施設)。昭和50年以降、増加傾向にあったが、今回は前年に比べ減少。
病院報告:病院での一日平均患者数
1日平均在院患者数は、101,526人で、前年比0.4%減。1日平均外来患者数は、143,510人で、前年比1.7%減。在院、外来ともに前年より減少。病院での平均在院日数―年々短くなり23.1日で、前年より0.4日短縮。

◆ 療養病床、新類型のあり方で病院経営者からヒアリング
社会保障審議会の特別部会、「療養病床の在り方」検討

――厚生労働省
厚生労働省は6月22日、月一回の割合で開催している社会保障審議会(社保審)の「療養病床の在り方等に関する特別部会」の2回目を開催した。「特別部会」というのは今年の4月6日に開催された社保審の部会として新しく「療養病床の在り方等に関する特別部会」の設置が了承されたばかり。
その目的は、療養病床(介護療養病床と医療療養病床『看護人員配置=25対1のもの』)が2017年度末に設置期限(廃止)を迎えるために、医療・介護ニーズを持つ人々への療養病床の在り方などについて連続して議論を重ね、これからの「療養病床の在り方」そのものの結論を導き出すことにある。

議論の方向については、厚労省の「療養病床の在り方等に関する検討会」が今年1月に報告書をまとめている。その要点は「医療機能を内包した施設類型」と、「医療を外から提供する、“住まい”と医療機関の併設類型」――という「新たな類型」が提言され、社保審で具体的な設計をすることになっていた。
特別部会の第1回会議では、主に医療を提供する立場から設置期限を延長すべきという意見が相次いだ一方、「医療法の立法趣旨から考えれば廃止を前提に議論すべき」との意見も出るなど、根本的な部分で対立がみられた。また、「新たな類型」について「療養病床からの転換だけでなく、新設も認めるべき」といった意見も出ている。
第2回会議では、療養病床の関係者(主に療養病床を持つ病院経営者)へのヒアリングが行われた。医療法人社団大和会多摩川病院(東京都調布市)の矢野諭理事長は「医療療養病棟の地域での存在意義は依然として大きい」と強調した。その理由として、重度長期慢性期患者やターミナル患者、認知症身体合併症患者に対する質の高い医学的管理の需要が存在すると説明。このため、医療の必要性が高くはないとされる「医療区分1」の患者の中にも不安定な重症患者が存在し、療養病床に関して提案されている新類型の医療外付け型のオンコール体制ではリスクが高いと指摘した。
さらに、矢野理事長は「最低限、同一施設内にすぐ駆けつけることができる当直医師が必須になる」と強調。新類型は「医療機能を内包した施設系サービス(医療内包型)が理想的だ」と訴えた。その上で、新類型では「容体の急変するリスクがある患者への対応と、看取り・ターミナルケア機能の強化を特色とすべき」と求めた。

また、吉岡充委員(NPO全国抑制廃止研究会理事長=東京都八王子市)は、医療区分1は社会的入院ではないと主張。「社会的入院が多いから介護療養型医療施設は介護施設でよく、医師・看護師を減らしてよいとする短絡的な話になっている」と指摘。医療区分3でADL区分1の患者等より、医療区分1でADL区分3の患者の方が医療処置を必要とする時間が長いと説明した。
さらに、介護療養型医療施設からの転換型老人保健施設では、医師・看護師が大幅に減り、夜間はほとんど配置できない状況で、退所先として医療機関が15%増え、施設内の看取りが14%減っていると指摘。このため、「安易な人員削減、介護施設化に反対する」と述べている。
介護療養病床については、2017年度末で廃止が予定されているが、医療ニーズの高い入所者の割合が増加している中で、今後これらの人々を介護サービスの中でどのように受け止めていくのか等が課題となっている。特別部会は第3回会議から具体的議論に入る予定になっている。年内に予想される結論は「医療内包型」と「医療外付型」の具体化的な「実像」が明確にピントを結ぶかどうかにかかっている。
* 特定非営利活動法人 全国抑制廃止研究会は東京都八王子市を中心に事業地として展開し保健・医療・福祉,人権・平和といったNPO活動に取り組んでいる団体。

◆ 緩和ケア研修対象 研修医と多職種の2種に 緩和ケア検討会
2017年までにがん診療に携わる全ての医師の9割以上目標

――厚生労働省
厚生労働省は6月27日、「がん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会」を開催し、「緩和ケア研修」について議論した。緩和ケア研修は、基本的な緩和ケアの理解と知識・技術の習得を目的に、2008年からがん診療連携拠点病院で実施している。
2012年、政府はがん対策を推進するため、「がん対策推進基本計画」を閣議決定した。同「計画」では、2017年までにがん診療に携わる全ての医師の9割以上が緩和ケアの知識を習得することを必須目標としている。

もし、緩和ケア研修の修了率が達成できなければ、がん診療連携拠点病院としての指定要件から外れることで不利益が生じる。医療機関にとって院内の受講率を高めるべく未受講者を減らしたい気持ちから積極的な受講を勧めているが、がん拠点病院における同研修会の受講率は全体の48.1%と50%(昨年9月=厚労省調べ)を割っており、芳しくない。
受講率アップの促進策では日本看護協会が、2014年3月に看護師の緩和ケア教育体制を整えるために、看護師に対する緩和ケア教育の標準テキストを作成。医師に対する緩和ケア研修体制については、「がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会の開催指針」が定める対策を行った経緯がある。

今回、厚労省は全ての医療機関で基本的な緩和ケアを実施し、全人的なケアを多職種で提供する重要性を指摘。全医療従事者が基本的な緩和ケアを身につけるための研修として、(1)拠点病院以外の医師が研修を受講する、(2)多職種が受講するのにふさわしい内容を検討する――の2項目を提案した。

(1)について、細川豊史構成員(京都府立医科大学疼痛・緩和医療学講座教授)は、緩和ケア研修を研修医制度に盛り込むことを提案。「5年後、10年後には、研修医が担当医、主治医として活躍するようになる。研修医の間はほぼ全領域の医師がいるので、すべての医師が受講すべき緩和ケアの基礎を学ぶことができる。これは絶対にやってほしい」と強調した。
また、桜井なおみ構成員(一般社団法人CSRプロジェクト代表理事)は、医学教育の到達目標に、診断時からの緩和ケアの項目が見られないと指摘。中川恵一構成員(東京大学医学部附属病院放射線科准教授)は、「文部科学省の医学教育課と連携を図ってほしい」と、厚労省に対して要望した。

(2)について、山田佐登美構成員(川崎医療福祉大学医療福祉学部保健看護学科特任教授)は、「主治医の理解がないと、緩和ケアチームを活用することは非常に困難」と説明し、主治医と緩和ケアチームが連携するために必要な研修を実施するよう要請した。
これを受け、三宅智構成員(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科・臨床腫瘍学分野教授)は、「研修内容は主治医が緩和ケアチームへ患者をつなぐ多職種連携と、緩和ケアチームとしての専門的な技量を養うことの2つが必要。現在の厚労省の目標を達成するために、今後も研修医を対象として研修は続け、どこかにチームの研修を盛り込んではどうか」と提案した。
厚労省発表では昨年9月1日時点で、がん患者の主治医や担当医のうち、受講を修了した人は2万217人(全体の48.1%)だった。都道府県別受講率は、山形、長野、三重の3県が受講率70%以上だったのに対し、秋田、福島、栃木、東京、京都、山口、宮崎の7都府県は40%未満だった。