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医療情報H28.9/1(木)

2016.09.01

今週も読んでお得な医療に関するニュースをお伝えいたします。

◆ 厚労省、脳卒中・心筋梗塞の医療体制強化へ検討開始
脳卒中WG、医療施設の地域差に焦点を当て全国調査

――厚生労働省
厚生労働省は8月18日、循環器病の診療提供体制に関する検討会の下部組織にあたるワーキンググループ(WG)を初めて開催した。WGには、厚労省より「脳卒中急性期の診療提供体制構築に向けた考え方」の提案がされた。2018年度からの次期医療計画を都道府県が策定する際、新たな医療計画に盛り込むことなどが主な目的。

WGでは、脳卒中が緊急性や専門性が高い疾患であることに触れ、そのためには確実に脳卒中疑い例を判別し「専門的医療を行う施設に直接搬送する体制が必要ではないか」という点に焦点を当てている。厚労省は、受け入れ体制や施設の選定に必要な評価項目に関する議論を促すために(1)専門的医療を行う施設の役割分担、(2)搬送体制と施設間ネットワーク構築の考え方――などをテーマに挙げた。

2015年の人口動態統計によれば、日本人の死因の2位が心疾患、4位が脳血管疾患。この2つを合わせると、全体の24%にのぼり、最多のがん(29%)に近い規模となる。また、2010年の国民生活基礎調査の「介護が必要になった原因」では、2つを足した割合が25%を占めていた。
厚労省は検討会で、循環器病の患者を救う施設の役割分担について試案を提示している。試案では、役割を「脳卒中」「急性心筋梗塞」「急性大動脈解離」の3種類に分け、初期対応をとる病院や専門的な治療を行う病院などをそれぞれ定めることで、さらにスムーズな流れを作れるのではないかとしており、これはWGに引き継がれた。それを受け、WGは脳卒中と心血管疾患の2種類を設置して議論することとなった。

この日のWGで厚労省は、(1)における脳梗塞について、血栓溶解療法のtPA療法(血栓溶解薬治療)の可能な時間が3時間から4.5時間に延長し、さらに、近年、発症後8時間以内の患者に対して、血管内治療による血栓除去術を考慮する急性期血管内治療の科学的根拠が確立していると指摘。これらを踏まえ、急性期診療提供体制を議論する必要があると提案した。
それに合わせ、厚労省は脳卒中急性期に専門的医療を行う施設として、24時間体制でtPA療法が可能な「専門的医療を行う施設」と、さらに、24時間体制で血管内治療・外科治療が可能な「高度な専門的医療を行う施設」に分け、このほか、専門的医療を行う施設へ転送する「主に初期対応を行う施設」など3種類の施設の役割分担をイメージしていると示した。このうち、「専門的医療を行う施設」では、治療適応の判断/tPA療法/早期リハビリテーションの実施/地域連携クリティカルパスの導入・診療計画作成の実施――などを行う。これに加えて、「高度な専門的医療を行う施設」では、血管内治療/脳外科手術/地域教育・医療従事者教育――を実施する。このほか、厚労省は各施設に必要な施設・機器・人員の医療資源や、各施設のストラクチャー・プロセス・アウトカムの各評価指標のイメージを示している。

(2)については、搬送体制等で、搬送から急性期に関し、厚労省は救急搬送時と患者の直接受診時に脳卒中を疑った場合、高度専門的医療の適応患者を「高度な専門的医療を行う施設」に搬送・転送し、血管内治療・外科治療を施行するイメージを提示。非適応患者は「専門的医療を行う施設」に搬送・転送してtPA療法を行う。脳卒中を疑わなかった場合、「主に初期対応を行う施設」に搬送するイメージを示した。また、地域の現状に即した施設間ネットワーク構築のイメージを示した。
WGがtPA療法の件数などの指標案を提示されたことを受け、今後は都道府県の現状を把握するため脳卒中の専門的医療を行う医療施設に地域差に焦点を当て全国調査を行う方針を決めた。また、疾患別にワーキンググループを設置して会合を重ねていく予定で10月をめどに全体の取りまとめを行う予定。その内容は、2018年度にスタートする新たな医療計画にも反映させたいとしている。

◆ 心血管疾患急性期、施設等の医療資源や体制提案
心血管疾患WG 「専門的医療施設の役割分担」を議論

――厚生労働省
厚生労働省は8月17日、「心血管疾患に係るワーキンググループ(WG)」の初会合を開催した。「心血管疾患急性期の診療提供体制構築に向けた考え方」を提案し、「専門的医療を行う施設の役割分担等の考え方」などを議論した。

心血管疾患急性期診療に関し、厚労省は心血管疾患の急性期で、大動脈疾患に対するステントグラフト治療などの低侵襲な治療法が普及してきたことを踏まえ、急性期診療提供体制について議論する必要があると提案。そこで厚労省は、心血管疾患の急性期に24時間体制でインターベンション治療(PCI)や外科的治療が可能な「高度な専門的医療を行う施設」と、24時間体制で再灌流療法・内科的治療が可能な「専門的医療を行う施設」と、専門的医療を行う施設へ転送する「主に初期対応を行う施設」の3種類の役割分担をイメージしていると示した。
このうち、「専門的医療を行う施設」では、治療適応の判断/急性心筋梗塞に対する再灌流療法(PCI・血栓溶解療法)/ポンプ失調に対する内科的治療/急性大動脈解離に対する外科的治療、血管内治療/早期リハビリテーション実施/地域連携クリティカルパスの導入・地域教育・医療従事者教育――を行う。加えて、「高度な専門的医療を行う施設」では、急性心筋梗塞に対するPCI・外科的治療や、ポンプ失調に対する外科的治療、急性大動脈解離に対する外科的治療・血管内治療(24時間体制)を実施する。

また、厚労省は役割分担した各施設に必要な施設・機器・人員の医療資源案を提示。このうち「高度な専門的医療を行う施設」に必要な医療資源は、次の通り。
 施設:特定集中治療室(ICU)、心臓内科系集中治療室(CCU)、手術室・ハイブリッド手術室(24時間体制)
 機器:CT(CTA)、血管連続撮影装置(24時間体制)、大動脈バルーンパンピング法、経皮的心肺補助法、補助人工心臓
 人員:循環器専門医、循環器内科・心臓血管外科医師、慢性心不全看護認定看護師、診療放射線技師・臨床工学技士・臨床検査技師、退院調整部門

◆ 特定健診・保健指導の効果検証、年齢別結果を公表
政府WG 第3期計画―2023年度医療費適正化基本方針

――政府
政府は8月17日、「医療・介護情報の分析・検討ワーキンググループ(WG)」を開催し、(1)医療費適正化基本方針、(2)第2次報告案――を議題に議論を進めた。
医療費適正化計画は、国民の高齢期の適切な医療確保を図る観点から、医療費の適正化を総合的・計画的に推進するために国や都道府県が定めている。医療費の見込み・目標や、健康保持の推進・医療の効率的提供の推進に関する目標(特定健診・特定保健指導実施率、メタボ該当者・予備群減少率、平均在院日数の短縮等)などが記載される。計画期間は5年で、第3期計画は2018年度~2023年度まで。早期に計画を策定した都道府県は2017年度から前倒しで実施する。

(1)では、医療費適正化に関して参考資料が提出され、特定健診・保健指導の医療費適正化効果検証に関する2008年度~2013年度の「経年分析報告」が示された。今報告は、特定保健指導後のメタボリックシンドローム関連3疾患に係る1人あたり入院外医療費と外来受診率を、同一対象者を追跡して分析したもの。今回は新たに年齢階級別データが公開されている。分析対象者は、積極的支援参加者1万1,606人(男性9,549人、女性2,057人)、不参加者8万4,558人(男性7万196人、女性1万4,362人)。

高血圧症・脂質異常症・糖尿病の3疾患に関して、積極的支援参加者と不参加者の1人あたり入院外医療費の差異(抑制額)は、次の通り。
 40~44歳:男性・マイナス4,960円~マイナス7,110円、女性・マイナス6,630円~マイナス1万6,320円
 45~49歳:男性・マイナス5,050円~マイナス1万2,270円、女性・マイナス2,560円~マイナス6,070円
 50~54歳:男性・マイナス6,890円~マイナス1万170円、女性・プラス2,250円~マイナス6,210円
 55~59歳:男性・マイナス6,220円~マイナス1万990円、女性・マイナス360円~マイナス9,960円
 60~64歳:男性・プラス2,800円~マイナス3,490円、女性・マイナス5,830円~マイナス9,750円

◆ 世界の臨床検査市場は623億ドル、日米欧の伸びは鈍化
富士経済 世界の臨床検査市場を調査

――(株)富士経済
2020年の市場は約704億米ドル。年平均成長率2.4%(2015-2020年)。
総合マーケティングビジネスの(株)富士経済(東京都中央区)は、経済成長が続く新興国における臨床検査ニーズの増大、検査環境の整備進展が拡大をけん引する世界の臨床検査市場を調査した。
その結果は報告書「2016年World Wide臨床検査市場」にまとめられている。この報告書では、臨床検査薬と検査装置からなる世界の臨床検査市場を地域別、検査領域別に分析。また大手から中堅まで、海外の臨床検査関連メーカー81社の事例を分析し、世界市場における展開状況をまとめた。

<調査結果の概要>
■臨床検査の世界市場
臨床検査の世界市場は、2015年に約623億米ドル、日本円で7兆7,925億円(1円=0.008米ドルで換算)となった。日米欧3極の市場はほぼ飽和しており伸びが緩やかとなっているが、新興国では経済成長に伴い市場が伸びており、世界市場の拡大をけん引している。
アジアでは中国市場が世界市場拡大の原動力として大きな役割を果たしている。中国市場は外資系メーカーの実績増を中心に成長してきたが、現在は中国メーカーが大きく台頭してきている。中国メーカーは将来的に世界市場への展開が予想される。今後も世界市場は年平均2.4%成長し、2020年には約704億米ドル、日本円で7兆8,167億円(1円=0.009米ドルで換算)が予測される。
注目市場は、検査環境が整備途上にある東欧・ロシア、アジア(日本を除く)、南米、アフリカなどである。中国やインドでは、大都市部や富裕層向けの医療機関は検査環境の整備が進んでいるが、地方や農村部は普及には程遠いところも多く、地域格差が大きい状況となっている。臨床検査の普及は医療環境の整備と同時進行するため、各国の都市部から市場が拡大していくこととなる。

日本市場は2015年に4,639億円、約37億米ドル(1円=0.008米ドルで換算)で世界市場の6.0%を占める。これまで拡大をけん引してきた免疫血清検査の伸びが鈍化しており、市場は微増となっている。2020年の市場は4,890億円が予測され、年平均成長率は1.1%にとどまる。飽和感強まる市場において日本メーカーが実績伸長を図る戦略の一つとして海外市場への展開がある。日本メーカーの技術、品質は世界で戦う力を充分に持っている。

① 地域別市場
北米は世界市場の44.7%を占める最大市場となっている。検査環境は整っており、新規導入は少なく、リプレース需要が中心である。従って、市場は微増となっている。
欧州は世界第2位の市場規模である。西欧は検査環境が整備されている。東欧・ロシアの整備の遅れを考慮しても、米国、日本と並ぶ検査環境が整備されている地域である。市場は飽和が進み、ほぼ横ばいとなっている。
東欧・ロシアにおける臨床検査の市場規模は西欧に比べて小さいが、今後の伸びしろの大きい市場として期待される。
アジアは北米、欧州に次ぐ市場規模である。日本を除き、現在は血液検査や生化学検査といった基本的な検査領域や感染症関連の免疫血清検査などに普及が限定されている国が多い状況である。中国やインド、インドネシア、マレーシア、タイなど、今後も経済成長が続くとみられる国が多く、将来的な人口増加や受診率向上などにより拡大が期待される市場である。
その他の地域は南米やアフリカ、中東、太平洋諸国などである。特にアフリカは将来的な経済発展を期待する世界的な大手メーカーの注力地域となっており、シェア争いが激化してきている。

② 検査領域別市場
免疫血清検査が最大市場を形成している。感染症を中心に市場拡大が続いている。米国や西欧、日本など先進地域は普及率が高く微増となっているが、新興国では普及が遅れており今後の成長が期待される。
血液検査は北米や欧州(特に西欧)、日本では既に普及が進み、横ばいから微増となっている。アジアやその他地域は市場が拡大しており、今後も確実な成長が期待される。生化学検査は基本的な検査であるため、北米や欧州では普及・飽和し、中国でも普及が進んでいる。世界的な大手メーカーが日本製の自動化学分析装置を導入して世界展開している。細菌検査は北米や欧州では検査の自動化が進み、同定・感受性装置、血液培養装置とも市場はほぼ普及・飽和している。中国、インドでも基幹病院を中心に装置は普及してきているが、潜在需要はまだ大きく今後の開拓が期待される。