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医療ニュース⑰

2016.04.04

◆ 医療費の地域差削減を目指し「見える化」に取り組む
社保審開催 「第3期医療費適正化計画」の基本方針案報告

――厚生労働省
厚生労働省の社会保障制度審議会医療保険部会が3月24日に開催された。厚労省側から2017年度以降を対象とする「第3期医療費適正化計画」の基本方針案の報告があった。
方針案の柱はNDB(National Data Base)を利用し、医療費や後発医薬品の使用割合、重複・多剤投薬の取り組みの「地域差の見える化」を行い、地域差の削減を推進すること。厚労省は今年度内に医療費適正化計画の基本方針を策定し、これまで都道府県の目標としていた「平均在院日数の短縮」は次期目標に含まないなど、新たな目標を各自治体に示す。予防接種、生活習慣病等重症化予防、病床機能分化・連携と地域包括ケアシステム構築なども組み込まれる。

「医療費適正化計画」は、都道府県と国が「医療費の見込み」と「医療費適正化のための取組」について5年ごとに策定する。第2期は2017年度までが対象の予定だったが、第3期計画を早期に実施するため、都道府県が前倒しで計画を策定している。2017年度からの前倒しの実施に合わせ、2016年度末までに大臣告示の医療費適正化計画の基本方針を策定する。
基本方針は、都道府県が医療費目標を推計するための算定式と医療費適正化の取組が主な内容になる。基本方針案の主な改正内容は、適正化の取組内容で平均在院日数を目標から外す一方、後発医薬品の数量シェア(80%以上)、医薬品の適正使用の推進、予防接種、生活習慣病の重症化などの予防・健診づくりの推進に関する目標を追加する点。これまでの特定健診の実施率(70%以上)、保健指導実施率(45%以上)、メタボリックシンドローム該当者・予備軍の減少率(25%以上)などの指標は継続する。
また、第3期計画で掲げる2023年度の都道府県の医療費目標で、外来医療費については、上記の特定健診・保健指導実施率や後発医薬品の数量シェアなどの目標が達成された場合の医療費削減額を反映させる方針。その上で1人当たり医療費の地域差の削減を目指すことを明記する。
入院医療費については、病床の機能分化と連携の推進の成果等を踏まえる。1人当たりの医療費の「地域差」については、国が「見える化」を行う。各都道府県の最大54の疾病別医療費、後発医薬品の使用促進、重複・多剤投薬についてNDBを利用して分析し、2016年度末までに結果をまとめて都道府県に提供する。3月24日の社保審では、このほかに「療養病床の在り方等に関する特別部会」の設置が提案され、了承された。

介護療養型医療施設と看護職員配置が25対1の医療療養病床については、2017年末に設置期限を迎えるため、その後の慢性期の医療・介護ニーズにどう対応するかが課題になっていた。今後の在り方について医療・介護分野を横断して総合的な検討を行うため、専門部会を設置し、月1回ペースで開催して年内に結果を取りまとめる工程を組んでいる。

◆ 医療機関ホームページの規制問題、厚労省が検討会立ち上げ
美容医療でのトラブル増加受け、消費者委員会が要望

――厚生労働省
厚生労働省は3月24日、医療機関のホームページ(HP)の在り方について議論を行う「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」(医療情報検討会/座長:桐野高明・東大名誉教授)の第1回会合を開催した。2016年秋頃を目途に取りまとめを行う予定。
医療機関のホームページを巡っては2012年に「医療機関のホームページの内容の適切なあり方に関する指針(医療機関ホームページガイドライン)」が厚労省医政局長名で出され、都道府県が医療機関へ指導する際の参考として使われてきた。医療機関が看板などに記載する広告内容は法律で定められ一定の制限が課せられていて診療科名や手術の内容などに限られている。しかしHPについては患者がみずから探して閲覧するため、広告に当たらないとして規制が行われていない。
最近になって美容医療サービスのHPでは、消費者を誘引する問題のある広告宣伝的な表示がみられる事例が頻発し、消費者トラブルが増加している。たとえば脱毛や脂肪吸引などの美容医療を巡り、「ホームページで見た内容と実際の効果が違う」などといった相談が全国の消費生活センターに相次いでいて、その数は、昨年度(平成26年度)は405件と過去最多となっている。
このため厚労省は、この検討会で医療情報の提供内容のあり方を検討することを目的に立ち上げ、この日は「医療機関のホームページの情報提供の適正化」についての「論点」を示した。
今回示された論点は、次の2項目。
(1)医療法第6条の5の規定にもとづき規制の対象とされている「広告」の概念を拡張し、医療機関のホームページも「広告」に含める。
(2)同法6条などにもとづき禁止されている「虚偽」の広告(比較広告、公序良俗に反する内容の広告など)を、医療機関のホームページについても禁止する。

これらの論点は、2015年7月に消費者委員会が取りまとめた「美容医療サービスに係るホームページおよび事前説明・同意に関する建議」の「建議事項1」にもとづいている。
消費者委員会は内閣府の管轄で、独立した第三者機関として、平成21年(2009)9月1日に設置された。各種の消費者問題について、自ら調査・審議を行い、消費者庁を含む関係省庁の消費者行政全般に対して意見表明(建議等)を行う役目を負っている。内閣総理大臣、関係各大臣又は消費者庁長官の諮問に応じて調査・審議を実施する。

◆ 4月7日は「世界保健デー」 糖尿病がテーマ
日本には約950万人の「糖尿病の予備軍」

――WHO(世界保健機関)
4月7日は「世界保健デー」。2016年世界保健デーのテーマは「糖尿病」。
世界保健デーは、世界保健機関(WHO)の憲章が効力を発した1948年4月7日を記念して設けられた。WHO(世界保健機関)は、設立以来全世界の人々の健康を守るため、広範な活動を行っている。
WHOは1948(昭和23)年4月7日に設立され、第一回総会が開催された。そのことを記念し、1950年以来、毎年4月7日が世界保健デーとして定められた。世界保健デーのテーマは毎年変わり、その時点において世界的に重要であり課題性のある健康に関する事項に焦点を当てて、関心を高め対策行動への契機とするために設定される。日本が独自にスローガンを打ち出したのは2010年から。
次に示した年代の「 」内は、日本での世界保健デー啓発のために厚生労働省が発表した日本語スローガン。公益社団法人日本WHO協会事務局は毎年その年の世界保健デーテーマに関連して、ウェブサイト広報や機関誌特集、セミナー開催等の啓発活動を行っている。
 2010年 「進行する都市化と健康を考える」
 2011年 「薬剤耐性の脅威 今動かなければ明日は手遅れに」
 2012年 「高齢化と健康 健康であってこその人生」
 2013年 「血圧管理の重要性:心臓疾患・脳卒中のリスクを減らそう」
 2014年 「節足動物が媒介する感染症から身を守ろう」
 2015年 「食品安全:あなたの食べものはどれくらい安全ですか?」
 2016年 「糖尿病」

2012年に実施された厚労省の糖尿病実態調査によると、日本には約950万の「糖尿病が強く疑われる人」が存在する。さらに、「糖尿病の可能性を否定できない人」も約1,100万人おり、合計で総人口の10%を超える約2,050万人の糖尿病患者および予備群がいると推定されている。糖尿病の重症化予防のためには早期発見・早期治療が重要だが、医療機関や健診で糖尿病といわれたことのある人の中で「治療を受けていない」人の割合は男女ともに30~49歳までの働き盛りが最も多く、約6割が未受診または治療中断という状況だ。糖尿病には痛みなどの自覚症状が少ないことから、疑いがありながらそのまま治療を受けないケースが多くあることが、その要因と考えられている。

2013年度からの「健康日本21(第二次)」での「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」では、糖尿病の目標として、①合併症(糖尿病腎症による年間新規透析導入患者数)の減少、②治療継続者の割合の増加、③血糖コントロール指標におけるコントロール不良者(HbA1cがJDS値8.0%(NGSP値8.4%))以上の者の割合の減少、④糖尿病有病者の増加の抑制、⑤メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少、⑥特定健康診査・特定保健指導の実施率の向上、が掲げられている。2018年度から、医療計画(6年間)、医療費適正化計画(6年間)、介護保険事業計画(3年間)、障害福祉計画(3年間)が、それぞれ対応する計画。

◆ 厚労省が「医療・介護の生産性向上策」示す 経済財政諮問会議
電子カルテの普及や医療データの互換性に課題

――内閣府
内閣府は3月24日、医療改革のゆくえに大きな影響を与える今年度4回目の「経済財政諮問会議」(安倍晋三議長)を開催した。今回は春の賃上げを終えた時期をとらえ「最近の経済情勢」を主なテーマに内閣府、日本経団連、各議員(現閣僚や有識者議員)などが順次、発表を行った。
主な発表内容は、最近の経済情勢~春季労使交渉の現状、日米金融政策~(内閣府)、個人消費の動向について(内閣府)、600兆円経済の実現に向けて~消費の持続的拡大~(有識者議員)、経済の成長・消費の拡大に向けた厚生労働分野の取組(塩崎臨時議員)、中小企業・小規模事業者の賃金の引上げに向けた取組みについて(林議員―経済産業相)など。
この会議では厚生労働省は「経済の成長・消費の拡大に向けた厚生労働分野の取り組み」の一環として、「医療・介護分野における生産性向上の取り組み」について示している。1月22日の同年初会合で厚労省は方針を示していた。経済・財政再生計画に沿った取り組みの1つとして、今回、厚労省が示した生産性向上への取り組みは、「医療」と「介護」それぞれについて具体策が説明されている。

「医療」に関しては、電子カルテの普及やデータの互換性、医療データベースなどに関する問題点が課題としてあげられた。そのうえで「保健医療分野のICT活用推進懇談会」を設置し、「医療情報の共通インフラやプラットフォームを整備する」などとして、次の具体策が示された。
○ 電子カルテ・データの「標準化」を進め、データの共有・収集・分析を促進
○ 患者の医療情報を共有できる「全国規模ネットワーク」を整備
○ 「医療等ID」を整備/医療連携を推進/「産官学が一体となった」研究開発や、「新規サービス創出」も促進

「介護」に関しては、事務負担の大きさや人手不足などが課題として指摘された。それらを受けた対策として、「介護のシゴト魅力向上懇談会」の設置と、具体策が次の通り示された。
○ 「文書量の半減」に向け、書類削減や、ICTを活用したペーパーレス化を推進
○ 介護現場のニーズに合った「介護ロボット」の戦略的な開発・普及
○ 地域ごとの状況がわかる、全国一元的な「見える化システム」の構築

塩崎臨時議員からの報告――厚労相
高齢者の就業促進について、定年延長、65歳以降の雇用継続を行う企業に対する支援を強化し、また、高齢者の再就職を効果的に進める方策などによって、多様な働き方を実現することが重要である。パート・アルバイトの処遇改善については、特に女性に関わることが多いので、130万円、103万円の壁による就業調整の是正が重要で、その一環として、民間企業の配偶者手当の在り方についても、検討を行っているところである。
最低賃金について、「最低賃金近辺」とは、最低賃金プラス15%の幅を指し、この中で所得を得ている人たちがどれだけいるのかということを示しており、全体では、この5年で、9.2%から13.4%に増えたということである。どういう就業形態かというと、パートが増え、なおかつ女性が約8割増えており、さらに男女別を見ると、女性がかなり増えている。年齢階層別のものを見ると、圧倒的に60歳以上は、最低賃金近辺で働いている方が多いという手ごたえを持っている。

安倍議長の総括――総理
アベノミクスの眼目は、成長の果実を、賃上げを通じた消費や投資の拡大につなげ、中小・小規模事業者を含め、力強い好循環を実現させることである。今年の春闘では、企業収益が過去最高である中で、欲を言えばもう少し力強さが欲しかったが、3年連続で多くの企業でベースアップが実現した。これは大変意味のあることである。
同時に、非正規で働く方の賃上げ幅の拡大や、同一企業グループ内での賃上げ幅の格差是正など、経済の底上げにつながる新たな工夫として評価できるとともに、今、我々が進めている政策と方向性を一にするものである。
経団連などとまとめた政労使合意を大切にしたい。そこで取り上げた下請等中小企業の取引条件の改善等に、関係大臣には万全を期していただきたい。最低賃金の引上げについて、1,000円を目指し、年率3%を目途に引き上げる方針である。経済界におかれては、取引条件の改善等にしっかりと御協力をいただきたい。個人消費の拡大に向けては、働きたい、働く時間を増やしたい、と希望する900万人もの人々の希望をしっかり叶えていかなければならない。
関係大臣には、短時間労働者が継続的に就業時間を増やせるよう、早急に検討を進めていただきたい。また、経済財政運営に当たっては、不断の統計の改善が必要である。