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医療ニュース⑪

2015.12.15

◆2016年度診療報酬改定の基本方針提示 
社会保障審議会医療保険部会・ 医療部会

――厚生労働省
厚生労働省は12月4日、社会保障審議会の医療部会を開催し、2016年度診療報酬改定に向けて「基本方針案」を示し、医療部会はこれを了承した。近く正式決定する運び。この基本方針案は、▼超高齢社会における医療政策の基本方向、▼医療機能の分化・強化、連携に関する視点の2点が柱。
なお方針案は12月2日の社会保障審議会医療保険部会で示されたものと同じ。また、医療部会では11月19日に開いた前回会合で、基本方針の骨子案が示されていた。両部会はともに了解した。基本方針は、社会保障審議会の「医療部会」と「医療保険部会」で討議され、12月上中旬には策定される見通し。
 
基本方針案は、1.改定にあたっての基本認識/2.改定の基本的視点と具体的方向性/3.将来をみすえた課題――を柱とし、骨子案と比較して文言の書き換えがあるが、同じ内容。
診療報酬改定について、現在は(1)社会保障審議会の医療保険部会と医療部会で基本方針を策定する。その次に(2)予算編成過程で内閣が改定率を決定する。これを前提に(3)中央社会保険医療協議会(中医協)で具体的な内容を審議する――という進行で役割分担が決まっている。

2016年度診療報酬改定の基本方針(本文)
1.改定に当たっての基本認識
(超高齢社会における医療政策の基本方向)
○ いわゆる「団塊の世代」が全て 75 歳以上となる平成 37 年(2025 年)に 向けて、制度の持続可能性を確保しつつ国民皆保険を堅持しながら、あらゆる世代の国民一人一人が状態に応じた安全・安心で質が高く効率的な医療 を受けられるようにすることが重要である。
○ 同時に、高齢化の進展に伴い疾病構造が変化していく中で、「治す医療」から「治し、支える医療」への転換が求められるとともに、健康寿命の延伸の 観点から予防・健康づくりの取組が重要となってくる。医療や介護が必要な 状態になっても、できる限り住み慣れた地域で安心して生活を継続し、尊厳をもって人生の最期を迎えることができるようにしていくことが重要である。
○ また、この「超高齢社会」という問題に加えて、我が国の医療制度は、 人口減少の中での地域医療の確保、少子化への対応、医療保険制度の 持続可能性の確保といった様々な課題に直面しており、さらには、災害時の 対応や自殺対策など、個々の政策課題への対応も求められている。こうした多面的な問題に対応するためには、地域の実情も考慮しつつ、平成 26 年度に設置された地域医療介護総合確保基金をはじめ、診療報酬、予防・健康づくり、更には介護保険制度も含め、それぞれの政策ツール の特性・限界等を踏まえた総合的な政策の構築が不可欠である。
○ さらに、2035 年に向けて保健医療の価値を高めるための目標を掲げた「保健医療 2035」も踏まえ、「患者にとっての価値」を考慮した報酬体系を 目指していくことが必要である。

(地域包括ケアシステムと効果的・効率的で質の高い医療提供体制の構築)
○ 「医療介護総合確保推進法」等の下で進められている医療機能の分化・強化、連携や医療・介護の一体的な基盤整備、平成30年度(2018年度)に予定 されている診療報酬と介護報酬の同時改定など、2025年を見据えた中長期 の政策の流れの一環としての位置づけを踏まえた改定を進めていく。
○ 特に、地域包括ケアシステムや効果的・効率的で質の高い医療提供体制の整備には、質の高い人材を継続的に確保していくことが不可欠である。人口の減少傾向や現下の人材不足の状況に鑑み、医療従事者の確保・定着に向けて、医療介護総合確保基金による対応との役割分担を踏まえつつ、医療従事者の負担軽減など診療報酬上の措置を検討していくことが必要である。

2.改定の基本的視点と具体的方向性
(1)地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携に関する視点
【重点課題】 (基本的視点)
○ 医療を受ける患者にとってみれば、急性期、回復期、慢性期などの状態に応じて質の高い医療が適切に受けられるとともに、必要に応じて介護 サービスと連携・協働するなど、切れ目ない提供体制が確保されることが重要である。
○ このためには、医療機能の分化・強化、連携を進め、在宅医療・訪問看護などの整備を含め、効果的・効率的で質の高い医療提供体制を構築するとともに、地域包括ケアシステムを構築していくことが必要である。

(具体的方向性の例)
(ア) 医療機能に応じた入院医療の評価・効果的・効率的で質の高い入院医療の提供のため、医療機能や患者 の状態に応じた評価を行い、急性期、回復期、慢性期など、医療機能の分化・強化、連携を促進。
(イ) チーム医療の推進、勤務環境の改善、業務効率化の取組等を通じた医療 従事者の負担軽減・人材確保・地域医療介護総合確保基金を活用した医療従事者の確保・養成等と併せて、多職種の活用によるチーム医療の評価、勤務環境の改善、業務効率化の 取組等を進め、医療従事者の負担を軽減。
(ウ) 地域包括ケアシステム推進のための取組の強化・複数の慢性疾患を有する患者に対し、療養上の指導、服薬管理、健康管理 等の対応を継続的に実施するなど、個別の疾患だけではなく、患者に応じた 診療が行われるよう、かかりつけ医やかかりつけ歯科医の機能を評価。
・ 患者の薬物療法の有効性・安全性確保のため、服薬情報の一元的な把握 とそれに基づく薬学的管理・指導が行われるよう、かかりつけ薬剤師・薬局の機能を評価。
・ 医療機関間の連携、医療介護連携、栄養指導等、地域包括ケアシステム の推進のための医師、歯科医師、薬剤師、看護師等による多職種連携の 取組等を強化。
・ 患者が安心・納得して退院し、早期に住み慣れた地域で療養や生活を 継続できるための取組を推進。

(エ) 質の高い在宅医療・訪問看護の確保
・ 患者の状態や、医療の内容、住まいの状況等を考慮し、効果的・効率的 で質の高い在宅医療・訪問看護の提供体制を確保。

(オ) 医療保険制度改革法も踏まえた外来医療の機能分化
・ 本年5月に成立した医療保険制度改革法も踏まえ、大病院と中小病院・診療所の機能分化を進めることについて検討。
・ 外来医療の機能分化・連携の推進の観点から、診療所等における複数の 慢性疾患を有する患者に療養上の指導、服薬管理、健康管理等の対応を 継続的に実施する機能を評価。

(2)患者にとって安心・安全で納得できる効果的・効率的で質が高い医療を 実現する視点
(基本的視点)
○ 患者にとって、医療の安心・安全が確保されていることは当然のことであるが、今後の医療技術の進展や疾病構造の変化等を踏まえれば、第三者に よる評価やアウトカム評価など客観的な評価を進めながら、適切な情報に基づき、患者自身が納得して主体的に医療を選択できるようにすることや、 病気を治すだけでなく、「生活の質」を高める「治し、支える医療」を実 することが重要である。

(具体的方向性の例)
(ア) かかりつけ医の評価、かかりつけ歯科医の評価、かかりつけ薬剤師・薬局の評価・ 複数の慢性疾患を有する患者に対し、療養上の指導、服薬管理、健康管理等の対応を継続的に実施するなど、個別の疾患だけではなく、患者 に応じた診療が行われるよう、かかりつけ医やかかりつけ歯科医の機能 を評価。(再掲)・患者の薬物療法の有効性・安全性確保のため、服薬情報の一元的な把握 とそれに基づく薬学的管理・指導が行われるよう、かかりつけ薬剤師・薬局の機能を評価。(再掲)
(イ) 情報通信技術(ICT)を活用した医療連携や医療に関するデータの収集・利活用の推進・情報通信技術(ICT)が一層進歩する中で、患者や医療関係者の視点に立って、ICT を活用した医療連携による医療サービスの向上の評価を 進めるとともに、医療に関するデータの収集・利活用を推進することで、実態やエビデンスに基づく評価を推進。
(ウ) 質の高いリハビリテーションの評価等、患者の早期の機能回復の推進・質の高いリハビリテーションの評価など、アウトカムにも着目した評価を進め、患者の早期の機能回復を推進。

(3)重点的な対応が求められる医療分野を充実する視点
(基本的視点)
○ 国民の疾病による死亡の最大の原因となっているがんや心疾患、肺炎、脳卒中に加え、高齢化の進展に伴い今後増加が見込まれる認知症や救急医 療など、我が国の医療の中で重点的な対応が求められる分野については、国民の安心・安全を確保する観点から、時々の診療報酬改定においても適切に評価していくことが重要である。

(具体的方向性の例)
○ 上記の基本的視点から、以下の事項について検討を行う必要。
(ア) 緩和ケアを含む質の高いがん医療の評価
(イ) 「認知症施策推進総合戦略」を踏まえた認知症患者への適切な医療の評価
(ウ) 地域移行・地域生活支援の充実を含めた質の高い精神医療の評価
(エ) 難病法の施行を踏まえた難病患者への適切な医療の評価
(オ) 小児医療、周産期医療の充実、高齢者の増加を踏まえた救急医療の充実
(カ) 口腔疾患の重症化予防・口腔機能低下への対応、生活の質に配慮した歯科医療の推進
(キ) かかりつけ薬剤師・薬局による薬学管理や在宅医療等への貢献度による評価・適正化
(ク) 医薬品、医療機器、検査等におけるイノベーションや医療技術の適切な評価等

(4)効率化・適正化を通じて制度の持続可能性を高める視点
(基本的視点)
○ 今後、医療費が増大していくことが見込まれる中で、国民皆保険を維持するためには、制度の持続可能性を高める不断の取組が必要である。医療 関係者が共同して、医療サービスの維持・向上と同時に、医療費の効率化・適正化を図ることが求められる。

(具体的方向性の例)
(ア) 後発医薬品の使用促進・価格適正化、長期収載品の評価の仕組みの検討
・ 後発品の使用促進について、「経済財政運営と改革の基本方針2015」で掲げられた新たな目標の実現に向けた診療報酬上の取組について見直し。
・ 後発医薬品の価格適正化に向け、価格算定ルールを見直し。
・ 前回改定の影響を踏まえつつ、現行の長期収載品の価格引下げルールの要件の見直し。

(イ) 退院支援等の取組による在宅復帰の推進
・ 患者が安心・納得して退院し、早期に住み慣れた地域で療養や生活を継続できるための取組を推進。(再掲)
(ウ) 残薬や重複投薬、不適切な多剤投薬・長期投薬を減らすための取組など医薬品の適正使用の推進
・ 医師・薬剤師の協力による取組を進め、残薬や重複投薬、不適切な多剤投薬・長期投薬の削減を推進。
(エ) 患者本位の医薬分業を実現するための調剤報酬の見直し
・ 服薬情報の一元的把握とそれに基づく薬学的管理・指導が行われるよう、かかりつけ薬剤師・薬局の機能を評価するとともに、かかりつけ機能 を発揮できていないいわゆる門前薬局の評価の適正化等を推進。
(オ) 重症化予防の取組の推進・重症化予防に向けて、疾患の進展の阻止や合併症の予防、早期治療の取組を推進。
(カ) 医薬品、医療機器、検査等の適正な評価
・ 医薬品、医療機器、検査等について、市場実勢価格を踏まえた適正な評価を行うとともに、相対的に治療効果が低くなった技術については置き換えが進むよう、適正な評価について検討。
・ また、医薬品や医療機器等の費用対効果評価の試行的導入について検討。

3.将来を見据えた課題
○ 地域医療構想を踏まえた第7次医療計画が開始される平成30年度に向け、実情に応じて必要な医療機能が地域全体としてバランスよく提供されるよう、今後、診療報酬と地域医療介護総合確保基金の役割を踏まえながら、診療報酬においても必要な対応を検討すべきである。
○ 平成30年度の同時改定を見据え、地域包括ケアシステムの構築に向けて、在宅医療・介護の基盤整備の状況を踏まえつつ、質の高い在宅医療の普及や情報通信技術(ICT)の活用による医療連携や医薬連携等について、引き続き検討を行う必要がある。
○ 患者にとって安心・納得できる医療を提供していくためには、受けた医療や診療報酬制度を分かりやすくしていくための取組を継続していくことが求められる。また、それと同時に、国民全体の医療制度に対する理解を促していくことも重要であり、普及啓発も含め、国民に対する丁寧な説明が求められる。
○ 国民が主体的にサービスを選択し、活動することが可能となるような環境 整備を進めるため、予防・健康づくりやセルフケア・セルフメディケーションの推進、保険外併用療養の活用等について広く議論が求められる。

◆大規模門前薬局の評価見直しなどを議論 中医協総会
対物から対人業務評価へ 患者本位の医薬分業で議論

――厚生労働省
厚生労働省は12月4日、中央社会保険医療協議会(中医協)の総会を開催し、2016年度の診療報酬改定に向けて、「調剤報酬」をテーマとして議論した。議論の対象となった事項は、(1)患者本位の医薬分業の実現に向けて、(2)かかりつけ薬剤師・薬局の評価、(3)対人業務の評価の充実、(4)いわゆる門前薬局の評価の見直し。
議論の趨勢として、かかりつけ薬局・薬剤師を評価する一方、門前薬局に一定の規制をかける方針で医薬品の適正使用を推し進め、医療費の伸びの適正化につなげたい考えで合意した。

(1)では「全体的な論点」が、(2)~(4)では「具体的な論点」が示された。(1)の焦点は、患者本位の医薬分業に向けた調剤報酬の取り扱いであり、「地域包括ケアシステムのなかで、患者の服用薬を一元的・継続的に把握し、患者がいつでも気軽に相談できる、かかりつけ薬剤師・薬局の推進」を前提としながら、全体的な論点として、次の内容などが打ち出されている。
● かかりつけ薬剤師が役割を発揮できる、かかりつけ薬局の機能を評価すること。
● 薬局業務について、対物業務から対人業務への構造的な転換を促すため、対物業務の評価について適正化をはかる一方、薬剤師が専門性を発揮できるよう、対人業務の評価を充実すること。
● 薬剤師の専門性や、かかりつけ機能を発揮することで患者に選択される、かかりつけ薬剤師・薬局を評価する一方、かかりつけ機能を発揮できていない大規模門前薬局などの評価を適正化すること。抽象的ではあるが、かかりつけ薬剤師の業務を包括的に評価することが検討されたということで、今後、この方向に進むことが決まった。
こうした論点に対し、委員から否定的な意見は出なかったが、中川俊男委員(日本医師会副会長)は「調剤報酬に関しては、(規模の大小などに違いがある)すべての薬局を一括して議論することは無理がある」と指摘したうえで、「(現状の)薬局の体制への評価を抜本的に見直し、かかりつけ薬剤師を、改めて評価する診療報酬・調剤報酬を考えるべき」などと発言した。

引き続き総会では、
(2)かかりつけ薬剤師・薬局の評価(かかりつけ機能を有する薬局の評価:基準調剤加算など)、(3)対人業務の評価の充実(薬剤服用歴管理指導料の見直しなど)、(4)大規模な「門前薬局」の評価の見直し(未妥結減算、かかりつけ機能を有していない薬局の適正化など)が議論された。
(2)~(4)では「具体的な論点」が示された。主な内容は次の通り。
(2)薬剤師が医師と連携して患者の服薬状況を一元的・継続的に把握する業務を評価してはどうか/基準調剤加算については、在宅訪問の実績要件をさらに求めるとともに、24時間対応に関する実態に即した要件の明確化など、「患者のための薬局ビジョン」などをふまえ、かかりつけ機能を評価してはどうか。
(3)対物業務の評価適正化として、例えば、調剤日数に応じて増加する一包化加算などの評価を見直してはどうか/対物業務から対人業務への構造的な転換を促すため、調剤料や指導料の評価の仕組みのあり方を引き続き検討してはどうか。
(4)現行の処方箋受け付け回数と集中率による特例対象の要件は、次期改定以降、段階的に拡大してはどうか/特例対象を除外するための24時間開局の要件は廃止してはどうか/前述の(2)や(3)のうち、かかりつけ機能に係る業務を一定期間行っていないと判断される薬局の評価をどう考えるか。
 
このうち(3)について、安部好弘委員(日本薬剤師会常務理事)は、方向性としては賛意を示しながら、「対物業務とされている業務(備蓄品目などの体制維持)にマイナスの影響を及ぼさないよう、慎重な評価のあり方を考えるべき」と述べた。今後、包括的に評価する新たな点数の導入を提案する一方で、大規模門前薬局の調剤基本料や一包化加算など調剤料を引き下げる。2016年度から3年間はこの方向性を段階的に強め、薬局機能の転換をうながす見込み。

◆「がんの年齢調整死亡率(75歳未満)の20%減少」未達成
「がん対策加速化プラン」への提言を取りまとめ 厚労省 

厚生労働省は12月3日、「がん対策加速化プランへの提言」を取りまとめて公表した。「がん対策加速化プラン」は、がん克服のための取り組みを強化する施策で、2015年内の策定が予定されている。また、同提言は、「がん対策推進協議会」で検討を重ねてきたもの。
 
1981年より日本の死因第1位である「がん」は、生命と健康にとって重大な問題であるとともに、がん対策は「1億総活躍社会」の実現に向けても重大な施策となっている。1984年以降、国と地方公共団体、がん患者を含めた関係者などが一体となって、がん対策を進めているものの、2015年6月の「がん対策推進基本計画中間評価報告」では、2007年度から10年間の目標である「がんの年齢調整死亡率(75歳未満)の20%減少」の達成は、たばこ対策やがん検診の受診率向上への施策が遅れているなどの理由で、難しいと予測した。
 
こうした背景から、政府は、(1)「避けられるがんを防ぐ」予防、(2)「がんによる死亡者数の減少につなげる」治療・研究、(3)「がんと共に生きる」共生―の3つの柱の「がん対策加速化プラン」を策定するとした。策定にあたり厚労省は、基本計画に示された分野のうち、「遅れているため『加速する』ことが必要な分野」と、「当該分野を『加速する』ことにより死亡率減少につながる分野」に絞り、短期集中的に実行すべき具体的施策を提言している。
 
基本計画の3つの柱に基づく厚労省の提言は、次のとおり。
(1) がん検診(受診率対策、職域のがん検診)、たばこ対策(禁煙対策、受動喫煙対策)、肝炎対策、学校におけるがん教育
(2) がんのゲノム医療、標準的治療の開発・普及、がん医療に関する情報提供、小児・AYA世代のがん・希少がん対策、がん研究
(3) 就労支援、支持療法の開発・普及、緩和ケア
 
このほか、協議会で検討されている加速化プランは次の通り(一部を紹介)
<予防>
(1)がん検診
○ 親子・会社等を通じた社会全体からの新たな受診勧奨
○ 市町村のがん検診と職域(協会けんぽ等)がん検診の連結管理
○ 企業、団体における健康づくり推進員の養成と受診人数の報告義務化
○ 職域でのがん検診受診率向上のための産業医の関与の促進
○ 検診の効率を考慮に入れた対象年齢の設定(上限を含む)
○ 小児・AYA 世代のがん、希少がんの早期発見
○ 女性が多く働いている企業等への受診推進のための働きかけを行うよう各都道府県に
<予算措置>
○ 検診クーポンや受診勧奨・再勧奨等の施策の検証と改善
○ 正確な受診率測定のための、対面調査を含めた測定方法の検証
○ 胃がん検診見直しに伴う検診受診率低下の防止
○ 検診受診率向上および社会への啓発のための国民キャンペーンの実施
○ マイナンバーとの連動等検診情報の一元管理
○ 検診機関によるがん検診の普及啓発
○ 検診機関における精度管理の徹底
○ 画像診断の精度や診断技術の向上、学会による指導強化
○ 検診の不利益(過剰診断、過剰検査、被ばく等)についても、国民に伝える。
○ 科学的根拠に基づかない検診については、学会などが声明を発表するほか、「がん情報サービス」のトップページにもアラート情報を掲載する。
○ 有給休暇を使わず、がん検診や精密検査を受けられる仕組みの構築
(2)たばこ対策
○ たばこ事業法の廃案もしくは改正
○ 飲食店等の民間業者の全面禁煙推奨、禁煙対策実施者へのサービス税の減免などのインセンティブ付与
○ 受動喫煙防止法の制定
○ 喫煙者の禁煙意図を阻害する政府補助金による分煙助成の廃止、剰余財源のキャンペーンやがん予防教育等の予防施策への充当
○ たばこ販売機の設置場所や店内における配置場所を工夫するなど、購買意欲を減らすための取組
○ 単なる空間分煙ではなく、屋内全面禁煙等、「無煙」環境の確保

◆医療安全確保に向け総務省勧告に対する厚労省回答を整理
厚労省への勧告に対する改善措置状況の概要を公表 総務省

――総務省
総務省は12月3日、「医療安全対策に関する行政評価・監視の結果に基づく勧告に対する改善措置状況(2回目のフォローアップ)の概要」を取りまとめて公表した。
総務省は独自の調査に基づいて一昨年(平成25年)8月、厚生労働省に対し、医療安全対策に関する実効性の確保を求める勧告をしている。調査の背景には、平成23年に医療事故が2799件に達し、依然として院内感染の事案も発生していることなどがあった。

概要は平成25年8月に行われた「医療安全対策に関する行政評価・監視」の勧告に対する改善措置状況について、厚労省からの2回目の回答(2015年11月20日)を受け、まとめたもの。行政評価・監視は、医療安全対策の推進を図る観点から、医療機関における医療安全管理体制の確保状況、国等による医療機関に対する指導監督の実施状況、医療安全対策に関する事業の実施状況等を調査し、関係行政の改善に資するために実施している。
 
たとえば、一部の医療事故のみの報告にとどまる医療機関があるため、総務省は、医療事故情報の報告範囲の周知徹底を勧告した。それに対して厚労省は、「日本医療機能評価機構による研修会およびFAX・ホームページによる『医療安全情報』の提供を通じて、医療機関に医療事故の報告範囲等を周知徹底」したと回答。
また、医療事故発生後の都道府県等による立入検査時に、再発防止策の周知状況や遵守状況に関する指摘がない例があり、医療事故の再発防止策の周知および遵守状況まで確実に検査するよう勧告したところ、「立入検査要綱に、医療事故に関する再発防止策の周知および遵守に関する項目を追加し、都道府県等に周知・要請」したと回答している。
  
このほか、300床以上の病院で感染制御チームによる週1回以上の病棟巡回を実施 していない例における、感染制御チームによる病棟巡回の的確な実施の勧告に対し て、厚労省は、「2014年度に実施したICT(感染制御チーム)などによる病棟巡回の取り組み事例に関する研究の結果を取りまとめ(今年年6月)、病棟巡回に関する取り組みの今後の方向性の検討結果などと併せ、都道府県等を通じ医療機関に周知予定」と回答している。

◆ストレスチェック制度の課題と対策を発表 日本精神経学会
制度スタート時点からの「懸念点が解決していない」

――公益社団法人 日本精神神経学会
公益社団法人 日本精神神経学会は11月30日、「職場におけるストレスチェック制度実施に関する見解」と題する見解を発表したが、「なお懸念すべき点が解決していない」とする問題点を改めて指摘した。
同学会は2015年12月1日の職場におけるストレスチェック制度のスタートに併せ、前もって法律改正時よりストレスチェック制度の課題や問題点を指摘してきた。しかし「なお懸念すべき点が解決していない」などとして、次のように「主な課題」と「その根拠・理由」等を指摘した。
● 産業医に関連する課題(理由―制度の実地に必要な精神医学的知識、技能を十分に修得する必要がある)。産業医には精神科の専門医が少ないことから、制度の実施に必要な精神医学的知識や技能を十分に習得させる必要があると指摘する。
● 労働者に関連する課題(同―マニュアルが具体性に欠けるので、労働者が安心して制度を利用できる環境などについて、より詳細な説明が求められる)。
● 集団分析の結果を受けた事業者の課題(同―分析結果の具体的な活用法を確立して公表すべき)。
 
さらに「多くの企業で制度の周知が不十分であったり、産業医に精神科を専門とした医師が少なかったりする」ことなども指摘し、こうした課題の「対策として早急に実施すべき事項」を、次のように列挙している。
産業医の実地的な研修(模擬的面接による研修、ケーススタディによる研修等)の実施/産業医を支援する精神科医の組織体制の確立/産業医および産業保健スタッフの負担増に関する調査/保健師等の配置を行う事業所への経済的支援/高ストレスと評価された労働者の中で面接指導を希望しない労働者がいた場合、気軽に相談できるような体制の例示/集団分析をふまえた職場環境改善の好事例の共有化。
なお、同学会の見解は、2015年12月1日より改正労働安全衛生法が施行され、職場におけるストレスチェック制度の運用が始まったことを受けたもの。