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医療情報  28.5/24(火)

2016.05.24

◆ 罰則を定めた「臨床研究規制法案」を国会に提出
政府 第三者のデータチェックなどを義務付け

――政府
政府は5月13日、臨床研究を適正に行うための「臨床研究法案」を第190回通常国会に提出した。一部の臨床研究について、第三者によるデータチェックなどを義務づけるなど国民の臨床研究に対する信頼の確保を図り、実施を推進することで保健衛生の向上に寄与することを目的とする。
これは高血圧治療薬のディオバンをめぐる研究不正問題の発覚から3年余が経過したのを受けての対応で、第三者の審査委員会の設置や製薬会社による資金提供の公表を義務づけ、最高で懲役3年か罰金300万円の罰則を定めた規制を設けたのが大きな柱。

現行制度において、薬の製造・販売承認を得るために行う臨床試験(治験)は、医薬品医療機器法(旧薬事法)で規制されている。しかし、医師らが製薬会社から資金提供を受けて医薬品の効果を確かめたり、承認された病気以外の効果を確認したりする場合は法規制がなかった。
製薬会社の資金提供は金額公表を義務付け、研究委託費だけでなく、研究室への寄付金、研究者個人への原稿執筆料、講師謝金も対象とする。違反すれば厚労相が是正勧告し、従わない場合は社名を公表する。
法案のここまでの経過をみると、4月27日、自民党・厚労部会が臨床研究の実施手続きや企業からの資金提供の公表制度を盛り込んだ臨床研究法案を了承。次に党内審査を経て、政府提出の法律案として今国会での成立をめざす段取りで進んできた。

対象は、製薬企業から資金提供を受けた薬などの臨床研究や、未承認・適応外の薬の臨床研究。研究責任者は臨床研究の実施基準に基づいた計画を作り、厚生労働相が認めた審査委員会の審査を経て厚労相に提出する。記録の保存や第三者によるデータチェック、事後の監査なども義務づけられる。厚労相は研究が適正に実施されていない場合、改善命令を出し、従わなければ中止を命じられる。
企業側には、研究資金を提供する場合、契約を結んで公表することを義務づける。研究開発費のほか、寄付金、原稿執筆料、講演謝礼も公表しなくてはならないが、飲食などの接遇費は含まれない。対象は研究責任者とその所属する研究機関に限り、研究に協力するほかの施設の医師らは対象外となる。

法案の構成は、「臨床研究の実施に関する手続き」と「製薬企業等の講ずべき措置」の2点について定めてある。
実施に関する手続きでは(1)特定臨床研究の実施に係る措置、(2)重篤な疾病等が発生した場合の報告、(3)実施基準違反に対する指導・監督――について規定する。
(1)では、薬機法の未承認・適応外の医薬品の臨床研究など、特定臨床研究の実施者に対して、インフォームド・コンセントの取得や個人情報の保護(秘密保持義務)などを義務づけた。また、実施計画による実施の適否などについて、厚生労働大臣の認定を受けた認定臨床研究審査委員会の意見を聞いたうえで、厚生労働大臣へ提出することを義務づけ、違反した場合の罰則(刑事罰)を設ける。ただし、特定臨床研究以外の臨床研究を実施する者に対しては、努力義務としている。
(2)では、特定臨床研究の実施者に対して、特定臨床研究に起因すると疑われる疾病などが発生した場合、認定臨床研究審査委員会に報告して意見を聞くと共に厚生労働大臣への報告を義務づけている。
(3)では、厚生労働大臣は改善命令を行い、従わない場合には特定臨床研究の停止などを命じることができる。また、保健衛生上の危害の発生・拡大防止のため、改善命令を経ることなく特定臨床研究の停止などを命じることができるとした。なお、いずれの命令も違反した者には罰則を適用する。

製薬企業等の講ずべき措置では、製薬企業などに対して、当該製薬企業の医薬品などの臨床研究に対して資金を提供する際の契約の締結と資金提供の情報等の公表を義務づけた。法案の施行日は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内で、政令で定める。

◆ 一億総活躍国民会議「働き方改革」最重視…「プラン」公表
今後10年の施策をまとめた「ニッポン1億総活躍プラン」

――政府
政府は5月18日、「1億総活躍国民会議」(議長・安倍晋三首相)を開き、今後10年間の施策をまとめた「ニッポン1億総活躍プラン」の案を示した。保育や介護の人材確保のための賃上げや、雇用形態の違いで賃金差をつけない「同一労働同一賃金」実現などを明記した。
保育士の賃金レベルは、女性労働者並みを強調した点が目立っている。国内総生産(GDP)600兆円、希望出生率1.8、介護離職ゼロ――の「アベノミクス新三本の矢」に共通する課題として「働き方改革」最重視の姿勢を強調。同一労働同一賃金などの実現に向けた検討を進めるとともに、働く人の環境整備として保育士や介護士の待遇改善策などを盛り込んだ。中でも保育士の給与をアップし、保育人材の確保や受け皿拡大を進める。非正規雇用の待遇改善に向け、労働関連の3法の改正を目指すのが目玉でもある。

一億総活躍国民会議は2015年秋に設置。1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は1.4程度。約1億2700万人の人口は、2060年には約8700万人に減る見通し。これを1億人にとどめるのが最大の目標だ。
ただ、国民会議の構成メンバーの脳裏には「長期にわたり費用がかかる施策が多いのでは?」というイメージも強いはずで、それが実現を阻むネックとして横たわる。やはり、財源の確保が今後の課題となりそうだ。
安倍総理はこれまでの雇用慣行には十分に留意するとされるが、安定した恒久財源も確保できていないため、どこまで実効性があるかは不透明だ。プランは今月31日に閣議決定する。

プランの柱となる働き方改革では、全労働者の4割を占める非正規労働者の待遇改善を「待ったなしの重要課題」と指摘。正規労働者の6割程度にとどまる賃金水準について、「欧州諸国に遜色のない水準(8割程度)」を目指すために「同一労働同一賃金の実現に踏み込む」と強調した。
その実現に向け、正規・非正規間の「不合理な待遇差」を明示するガイドラインを作成し、関連法案も国会に提出する。企業側には正規と非正規の待遇差の説明責任を求める。非正規労働者の待遇改善策として、最低賃金の時給を全国平均で1000円とする目標も示した。

仕事と家庭が両立できるよう長時間労働是正も打ち出し、労働基準法36条に基づき上限のない時間外労働を認める労使協定(36協定)についても見直す方針を明記した。
一方、働く人を支えるために保育や介護施設を整備する上で壁となっている保育士と介護士の人材不足解消策も盛り込んだ。

保育士は2017年度から月給を2%(約6000円)引き上げた上で、ベテラン保育士の給与が最高月4万円程度上がる昇給制度を作り、女性の全産業平均並みに改善する。小学校入学後の預け先となる放課後児童クラブについても、18年度末までに30万人分を追加整備する。
介護士については、17年度からキャリアアップの仕組みを整え、月給平均1万円程度上げるとした。返還の必要のない給付型奨学金創設の必要性にも触れたが「公平性や財源などの課題を踏まえ検討を進める」との表現にとどめている。
安倍首相は、国民会議で「少子高齢化の下での持続的成長は先進国に共通する課題だ。伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)の議長国である日本が先駆けて少子高齢化の克服に向けた道筋を示すことは大きな意義がある。今月内に閣議決定できるよう関係大臣と協力して作業を進めるようお願いしたい」と述べた。

<1億総活躍プランの骨子>
 保育士の賃金を月平均6千円引き上げ、職務経験に応じ最大約4万円を上乗せ
 介護職員の賃金を月平均1万円引き上げ
 全国加重平均1千円の最低賃金をめざす
 同一労働同一賃金の実現に向け、関連する労働法を一括改正。19年度の施行をめざす
 長時間労働を減らすため、労働基準法の時間外労働規制のあり方を再検討
 無利子奨学金の給付対象を拡大。給付型奨学金は来年度導入に向け、制度設計を進める
 人工知能(AI)や「モノのインターネット(IoT)」の技術開発を支援

◆ 生産年齢人口、首都圏でも減少に転じ高齢者の支え手減る
国交省「首都圏白書」まとめる 空き家の有効活用も課題

――政府
政府は5月13日、2016年版の首都圏白書(「平成27年度首都圏整備に関する年次報告」)を閣議決定した。今後の高齢化は郊外のニュータウンなどでとりわけ急速に進んでいくと分析し、生産年齢人口(15~64歳)は首都圏(1都7県―東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・栃木県・茨城県・群馬県・山梨県)でもすでに減少に転じた。現在は大半の市町村で高齢者1人を2人以上の現役世代で支えているものの、2040年にはほとんどの地域で支え手が2人未満に減ると指摘した。
今後、建設現場や社会福祉で働く人材が一段と不足する懸念があり、高齢者や女性を含め、誰もが働きやすい環境づくりが重要と訴えた。特に介護職員の確保がさらに難しくなっていくことも予測。元気な高齢者や女性も働きやすい環境をつくることなどにより、老若男女が活躍できる社会に変えていくことが大事だとしている。
そのためにはこの将来像とあわせて、介護サービス業の有効求人倍率が3倍を超えている現状(昨年12月)も図示。マンパワー不足のさらなる深刻化に警鐘を鳴らし、「首都圏が連携して対応を進めることが重要」と呼びかけた。

白書では、10年時点では高齢者1人を支える現役世代の数は市区町村の大半で2人以上、都心は3人以上となっていたが、40年までに大幅に減少する見通しとしている。都心から50キロメートル以上離れると、支え手が1人未満の市町村も多数出現しそうだ。
都心から50キロメートル以内の地域のうち、ニュータウンが多い郊外では75歳以上の後期高齢者が急速に増える。白書をまとめた国交省は、介護施設の不足や空き家の急増といった課題への対処が必要と指摘した。

白書はこのほか、空き家が増え続けている状況にも触れ、東京圏で「空き家増加」は45年間で15倍に膨らみ、”空き家率”は千葉県が最高と分析した。そこで白書は空き家の有効活用を強く求めている。地域別には茨城、栃木、群馬、山梨の4県で、人口減や高齢化に伴い全住宅に占める空き家(別荘など含む)の割合が上昇したと指摘。一方、人口流入が進む東京都を中心に中古住宅のニーズは拡大傾向にあるとして、空き家の有効活用や中古市場の活性化を求めている。
白書によると、空き家は首都圏全体では2008年から2013年までの5年間におよそ23万戸増加。首都圏全体では、東京都を中心に2008年から2013年までにおよそ23万戸増加。空き家率の4県平均は、08年の15.3%から13年は16.4%となり、首都圏平均の12.2%(13年)を上回った。白書は「円滑な住み替えなどに加えて、空き家や中古物件の流通を促進することが重要」との見方を示している。

地域別空き家率を見た場合、首都圏で最も高かったのは千葉県で13.1%。以下、東京都特別区(以下、23区)が11.3%、埼玉県が10.7%、神奈川県が10.5%と続いた。東京23区の空き家数は約54万戸に上り、今後の世帯数の減少を踏まえると、既存住宅地における再整備に向けた取り組みが行われない場合、空き家がさらに増加する恐れがあると指摘している。

◆ 外部からの訪問看護サービスの対象拡大を要望 日看協
医政局・老健局長宛てに「2017年度予算に関する要望書」

――日本看護協会
公益社団法人日本看護協会(会長・坂本すが 日看協)は5月12日、厚生労働省医政局(神田裕二局長)と老健局(三浦公嗣局長)に対して、「2017年度予算に関する要望書」を提出した。来年度(2017年度)の予算編成に当たり日看協は、(1)高齢化が進む中で看護師の役割は多様化・高度化しており、教育内容の追加が必要、(2)介護施設や訪問看護ST(ステーション)などの看護師に、特定行為研修受講の機会拡大を、(3)在宅・介護分野での看護体制を整備することが、地域包括ケアでは不可欠――とする3点に絞った要望を、担当2局長に宛てて行った。
5月16日には、厚労省の香取照幸雇用均等・児童家庭局長に来年度の予算などに関する要望書を提出。坂本会長は、看護職の育児・介護と仕事の両立支援の推進、保健師・助産師の活用による子育て支援の推進、子育て世代包括支援センター機能の強化を求めた。

■医政局への要望
重点要望として「看護師養成の教育年限4年の実現」をはじめ「『特定行為に係る看護師の研修制度』の推進」「地域包括ケアシステム推進のための人材の育成」「看護職員の確保・勤務環境改善対策の推進」「医療機関・施設等における医療安全の更なる確保・推進」「周産期医療体制整備の推進」の6点を挙げた。
坂本会長は、基礎教育が過密で実践能力育成に必要な時間が確保できない現状を説明。早急に基礎教育を抜本的に見直す必要があり、「加えて地域包括ケアを推進する上で、看護師がキーパーソンとなり役割を果たすための高い能力が必要」と、今後更に必要な教育を追加するためにも、教育年限を4年にする必要性について理解を求めた。
神田局長は「地域包括ケアを進める上で、看護の役割は重要。看護師の役割や基礎教育の充実については今後、議論する予定だ」との考えを示した。

■老健局への要望
急増する在宅療養者や認知症の人とその家族、重度要介護者の医療・介護ニーズに対応し、地域包括ケアシステムを実現するため、「介護施設等における外部の看護人材活用による医療提供体制の整備」「介護施設等における看護人材の育成・定着に向けた研修支援の充実」など4点を要望した。
介護施設などで働く看護職員は配置数が少なく、研修の機会を得にくい一方、さまざまな場面で高度な判断や他職種との連携を求められるため、研修機会の拡充や整備をはじめ、育成や定着に向けた支援を求めた。
三浦局長は「地域の中での看護人材には大いに期待している」と前向きに答え「看護職員が離職せず、病院や介護施設、訪問看護ステーションなど地域の多様な場を経験することでキャリアアップできる仕組みを考えることも重要ではないか」と述べた。

日看協が医政局へ提出した要望書で注目されるのは、「看護師の教育年限を4年に延長し、特定行為研修を推進し、より質の高い看護の実現を」と予算編成への反映を求めている点だ。
要望書の内容は(1)看護師養成の教育年限の4年の実現、(2)「特定行為に係る看護師の研修制度」の推進、(3)地域包括ケアシステム推進のための人材育成、(4)看護職員の確保・勤務環境改善対策の推進、(5)医療機関・施設等における医療安全のさらなる確保・推進、(6)周産期医療体制整備の推進――の6点にわたっている。
(2)では、制度推進のためには、職場に在籍しながら研修を受講するための支援が不可欠と指摘。看護師が少ない訪問看護ステーションなどでも研修の受講の機会が広がるよう、看護師を派遣する施設に対して財政措置を図るよう求めている。
(4)では、人材確保法基本方針について、看護職員の就業実態や確保を巡る状況が告示当時(1992年)から大きく異なっており、新たな指針の策定が期待されると述べ、人確法基本指針の改訂を要求。その際に、看護労働の負担軽減に向けた改善目標の具体的な数値、看護師等の届出制度と再就業支援対策の充実などの取り組みの方向性を示すよう求めた。

医師・歯科医師の包括的指示の下で、一定の医療行為(特定行為)を実施するための研修(特定行為研修)についても、2017年度予算でより推進すべきと強調。具体的には、次の3項目を求めている。
① 地域の中小病院・介護施設・訪問看護ステーションなどに勤務する看護師を対象に特定行為研修を実施する指定研修機関への財政支援
② 介護施設や訪問看護ステーショが特定行為研修に看護師を派遣している間の「代替職員」確保に向けた財政支援
③ 「特定行為」とすべきか否かについて引き続き検討が必要とされた行為(「経口・経鼻気管挿管の実施」「経口・経鼻気管挿管チューブの抜管」など)に関する議論の再開

さらに、地域包括ケアシステムを推進するための人材の育成に向けて、▽病院看護師を対象とした退院支援関連研修の充実 ▽在宅医療・訪問看護にかかるハイレベルケア人材育成事業の継続と、訪問看護リーダー養成事業の追加――を行うことも要望した。

老健局へ提出した要望書では、(ⅰ)介護施設等における外部の看護人材活用による医療提供体制の整備、(ⅱ)認知症高齢者のための、看護師を含む多職種協働による訪問療養支援(服薬管理など)モデル事業の実施、(ⅲ)認知症対応力向上研修の指導者層の育成および研修の機会拡充、(ⅳ)介護施設等における看護人材の育成・定着に向けた研修支援の充実――の4点を挙げている。
(ⅰ)では、すべての居住系サービスが医療職を必要数常時配置することは困難であり、必要に応じて外部の看護人材活用による医療提供体制を整備すべきと指摘。現行制度で特別養護老人ホームの末期がんなどに限り医療保険適用が認められる「外部からの訪問看護サービス導入」の対象疾患・状態像や、契約による夜間緊急時対応など、拡大を検討するよう求めている。
(ⅱ)の訪問看護については、特養ホームや認知症グループホームのほか、有料老人ホームなどの特定施設に対して、必要に応じて適時適切に外部の訪問看護サービスを導入できる体制が必要としている。具体的には▽特別養護老人ホームや居住系サービスにおける医療ニーズへの対応、夜間・緊急対応を強化するため、「外部からの訪問看護」を可能とする疾患や状態像の拡大を検討してほしい ▽外部の認定看護師・専門看護師などによるコンサルテーションや技術指導を行うモデル事業の実施 ▽在宅の認知症高齢者に対する、看護師を含めた多職種協働による「訪問療養支援」(服薬管理など)のモデル事業実施などを挙げている。