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医療ニュース④

2015.10.02

◆厚労省部局横断会議「保健医療2035推進本部」が始動 
2035年に向けたビジョン「保健医療2035策定懇談会」

――厚生労働省
厚生労働省は9月24日、厚労省内の部局横断会議「保健医療2035推進本部」を開催した。これは戦後生まれで最多の人口増世代(団塊世代)が75歳以上になる10年後の2025年、さらに20年後の2035年を視野に入れた保健医療政策のビジョン作りに本格着手する省内会議の第一歩。推進本部は、厚生労働事務次官を本部長に据え、関係する部局の局長ら本部員とし、その下に課長クラスによる幹事会を設置した。

国は2015年2月、「保健医療2035策定懇談会」(座長:渋谷健司東京大学大学院教授)をスタートとさせた。懇談会は、塩崎厚労相の私的懇談会だが、「急激な少子高齢化や医療技術の進歩など医療を取り巻く環境が大きく変化する中で、2035年を見据えた保健医療政策のビジョンとその道筋を示すため、国民の健康増進、保健医療システムの持続可能性の確保、保健医療分野における国際的な貢献、地域づくりなどの分野における戦略的な取組に関する検討を行うこと」を目的として活動をしてきた。
今年6月、これまでの議論を踏まえた提言書「保健医療2035」を取りまとめ、塩崎恭久厚生労働大臣に手渡した。提言内容は、今後20年間の人口構造の変化に伴い予測される医療需要の増加、グローバル化などに対応する新ビジョンの保健医療システムで120項目もある。その要点は、かかりつけ医の普及やアウトカムを考慮した診療報酬体系の設定など短期・集中的な検討項目5項目を優先的に検討が必要な課題としており、推進本部は関係部局が連携して構成する複数の検討チームを設置。実現に向けて具体的な検討を進めるとしている。

この提言書に基づいた施策を厚労省内で推進するのが「保健医療2035推進本部」で今回が2回目。第1回会合は8月6日に開催されている。2回目の9月24日、横断会議は①保健医療2035実行プラン、②検討チームからのプレゼンテーションを中心議題に据えた。
①では、保健医療2035提言書の施策に関して、(1)、提言に沿って直ちに実行に着手する施策(97項目)、(2)実行のための具体的な検討を進める施策(22項目)、(3)直ちに実行することは難しいが検討を深める施策(1項目)に分類し、工程表を提示している。
たとえば、(1)では、都道府県の努力の違いに責任(財政的な負担)を担う仕組みに関して、2016年度に国保保険者努力支援制度の新評価指標を取りまとめ、2018年度に運営を開始する。また、訪問看護のパラメディカルが行える業務拡大に関し、2016年度診療報酬改定での検討のほか、2018年度介護報酬改定で中重度の要介護者の医療ニーズを踏まえた評価を検討。また(2)では、総合的な資格(医療・看護・介護・リハビリを含めた対応が可能な職種)創設、サービスの提供量に応じて診療報酬の点数を変動させる仕組みの導入などの工程表が示された。
 
②では、省内の検討チームが報告を行い、「総合的な診療を行う『かかりつけ医』の普及・確立」に関して、地域のかかりつけ医の「ゲートオープナー」機能を確立すると説明している。2016年度診療報酬改定で、かかりつけ医機能のさらなる強化を検討。2016年度予算で「かかりつけ医普及促進モデル事業」に4.5億円を要求して、病・診連携、在宅医療推進、看取り対応推進などを行う市区町村などに、1カ所4,500万円程度を上限に補助を実施する。
また、「患者の価値やアウトカムを考慮した診療報酬体系・インセンティブの設定」は、医療サービスの効果・価値などを診療報酬点数に反映。このため、DPC病院を拡大するほか、2016年度改定での入院医療から在宅復帰に向けた流れを加速するための在宅復帰率のあり方や医療技術等の費用対効果評価の試行的な導入を中医協で検討するとしている。

短期・集中的な検討を要する5項目とは、(1)総合的な診療を行う「かかりつけ医」の普及・確立、(2)患者の価値やアウトカムを考慮した診療報酬体系・インセンティブの設定、(3)たばこフリーを進めるとともに、効果が実証されている予防、特に重症化予防の積極的推進、(4)情報基盤の整備と活用の推進(保健医療・介護の関連データの連結、NCD(National Clinical Database)の前疾患への対象化など)、(5)グローバル・ヘルスを担う人材の育成体制の整備と官民一体となって人材をプールする仕組みの創設。

◆健康情報拠点薬局の名称は健康サポート薬局に決定
地域包括ケアシステムに「かかりつけ薬局」創設へ

――厚生労働省
厚生労働省は9月24日、「健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会」の報告書を公表した。仮称のまま議論してきた薬局の名称は「健康サポート薬局」とし、医薬品の供給体制に関する要件は、服薬情報の一元的な把握や24時間在宅患者からの相談に応じる体制とすることなどの基本的な機能要件を示した。
しかし製品群や品目数などを盛り込まず取りまとめたのは構成員間の意見対立が根底にある。このまま地域包括ケアシステムの構築の一環として創設を目指している「かかりつけ薬局」の仕組みについては、予定通り来年4月1日から厚労省のHPで順次公開していく。
 
健康サポート薬局の検討は、日本再興戦略(成長戦略)で、地域に密着した健康情報の拠点として薬局・薬剤師活用による、一般用医薬品等の適正使用の助言・健康相談などのセルフメディケーション推進が打ち出されたことを受けたもの。2015年6月から6回にわたる検討を行い、今回の報告書にまとめた。
検討会は前回(14日)で最終回となりおわっている。

報告書では、名称と医薬品の供給体制が加筆されたほかは特別の新しさはない。決まっていなかった正式名称に関しては、地域住民による主体的な健康の維持・増進を支援する役割・機能がわかりやすく伝わるよう「健康サポート薬局」にしたとしている。
基本的な薬局の機能要件などに関しては14日の検討会で示された報告書案とほぼ同じ内容で文言修正が若干行われている。前回を振り返ると、議論の中心は「健康づくり支援薬局(仮)」の名称と「一般用医薬品(OTC)販売の認定要件化」だった。厚労所の描く「かかりつけ薬局の基本的機能」とは服薬情報一元管理、医療機関等との連携、24時間対応などを要件に加えていた。
しかしこの認定要件では日本医師会とそれ以外の立場の構成員の間で意見が対立したまま、検討会の時間的な制限内では解決策は持ち越しとなった。
構成員間の対立とは、厚労省はこれまで、薬局の医薬品の供給体制に関する要件で、要指導医薬品や一般用医薬品(OTC)の取り扱いに関し、「一般用医薬品等を、原則として中分類につき2銘柄以上取り扱っていること」を提案し、議論を続けてきたが折り合わず具体的に製品群や品目数は要件に盛り込まず取りまとめたもの。
要指導医薬品等に関する要件は次の通り。

● 要指導医薬品等、衛生材料、介護用品などについて、利用者自らが適切に選択できるよう供給機能や助言の体制を有する
● その際、かかりつけ医との適切な連携や受診の妨げとならないよう、適正な運営を行っている
● 要指導医薬品等や健康食品等に関する相談を受けた場合、利用者の状況や要指導医薬品等や健康食品等の特性を十分に踏まえ、専門的知識に基づき説明する

◆医療死亡事故調査費用、医療機関負担10万円
「事故調制度支援事業運営委」が初会合

――厚生労働省
病院や診療所が医療死亡事故を起こした場合、その施設自身で原因を調べ、遺族や第三者機関に報告する「医療事故調査制度」が10月1日から始まる。
9月28日、第三者機関「医療事故調査・支援センター」(以下、センター)に指定された日本医療安全調査機構(東京)は、第1回運営委員会(「医療事故調査・支援事業運営委員会」)を開き、年間1,000〜2,000件と推定される死亡事故のうち、300件程度について調査を実施するとの見通しを明らかにした。

そのための大前提となるのは医療事故死の定義である。それは「予期しなかった死亡・死産」とされ、あらかじめ具体的に死亡の可能性があることを患者に伝えていた場合は、「予期しない死ではないので医療事故ではない」とされる。
 
医療事故制度の運営は次のような流れになる。
まず①患者が死亡する事故が起きた場合、病院など医療機関は、新たに設けられる第三者機関「医療事故調査・支援センター」に報告することが義務づけられる。
続いて、②医療機関は自ら事故の原因などを調査する。この院内調査には医師会などの支援団体が必要な支援を行うことも明記されている。
③調査結果は遺族に説明し、第三者機関に報告するが、遺族には「口頭説明」、第三者機関には「報告書」という語彙以上の差違が出ている。
そこで④遺族は、医療機関の院内調査に納得がいかない場合など、第三者機関による調査を求めることができる。⑤第三者機関は、再発防止のための普及啓発なども行う。
遺族側の不満は、このように事故調査を行うのは医療機関の院内調査で、中立の第三者機関ではないこと。さらに院内調査には外部団体は加わらないことも決まっている。
つまり新たな医療事故調査制度に求められている中立性・透明性のあり方に、遺族側は不満を隠せないのが現時点での本音だ。その感情に配慮したかのように今年10月にスタートする制度を、早くも来年の6月までには見直すという、異例の内容が法律に盛り込まれた。早い話、調査費用の多寡など本旨からは遠い話なのだ。

この医療調査制度では、予期しない死亡事故が起きた際、医療機関にセンターへの報告と院内調査を義務付けている。遺族か医療機関が院内調査に不満を持った場合は、センターに調査を依頼することができる。
センターは、死亡事故全体の4分の1程度の調査依頼があると想定。調査費用は数十万円と見込まれており、遺族から依頼された場合は2万円、医療機関の場合は10万円の負担を求める。センターに遺族が調査依頼する場合の負担については、制度設計段階から、所得の多寡にかかわらず、負担が可能な範囲の額にするとして、低額に抑える方向が決まっていた。ただし調査費用について、毎年度の調査の状況を検証した上で見直すとしている。
調査の対象となるのは、10月1日以降に起きた「予期せぬ死亡事故」。医療機関は、厚生労働省が指定した第三者機関の「医療事故調査・支援センター」に事故を届ける。
医療機関の中に院内調査委員会を立ち上げ、診療にかかわった医師らへの聞き取りや診療記録のチェックなどで、事故の原因を調べる。調査の結果は遺族に説明し、第三者機関にも報告する。費用は医療機関が負担する。
遺族が調査結果に納得できなければ第三者機関に再調査を依頼できる。ただし死亡事故が起きても、医療機関側が「(前もって)予期できた」と判断すれば、調査の対象とならない。医療機関が調査しない事故について、遺族が第三者機関に調査を求めることはできないのである。

◆産業医の位置づけや役割の見直しへ 産業医制度検討会
「産業医制度の在り方に関する検討会」の初会合

――厚生労働省
厚生労働省は9月25日、「産業医制度の在り方に関する検討会」の初会合を開催した。2015年12月からのストレスチェック制度導入に伴い、検査、面接指導などが産業医の職務として追加、増大される。こうした背景から、産業構造や産業保健の課題に変化がみられ、労働安全衛生法における産業医の位置づけや役割を改めて見直す必要性が出てきている。
 
初会合では、産業医制度の変遷や現状が報告された。産業医の位置付けや役割を見直すことが目的で、必要に応じて法令の改正も念頭に置いた検討を行うとしている。
今後の検討会の予定では、①産業医の職務の範囲②医師以外の産業保健スタッフの役割③小規模事業場における労働衛生管理体制の強化④事業者と産業医の関係などを検討項目に挙げている
2010年の労働安全衛生基本調査報告では、事業所規模50人以上の事業所で産業医を選任している事業所の割合は、全体で87.0%となっており、100人以上の事業所では95%以上と高い。また、産業医が関与した業務の割合は、「健康診断結果に基づく事後措置、再発防止の措置」が全体で73.5%と最も高く、次いで「健康診断の実施に関すること」63.2%、「健康相談・保健指導の実施」60.6%となっており、「労働者の健康障害の原因調査」は15.6%と低い。
 
これらの状況をふまえ、厚労省は産業医制度の在り方に関して、今後検討する論点を次のように示した(カッコ内は主な内容)。
(1) 求められる労働衛生管理(業種を問わず必要なことは何か)
(2) 産業医に期待される役割(すべての事業場、有害業務のある事業場で何が期待されるのか)
(3) 医師以外の産業保健スタッフの役割(看護職、技術専門職の役割、チーム体制など役割分担と連携強化)
(4) 小規模事業場の労働衛生管理強化(法定事項の確実な実施のための方策)
(5) 事業者と産業医の関係(産業現場での産業医の立場、課題)
(6) その他(産業保健サービスを提供する外部機関の質の確保)