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医療ニュース⑯

2016.03.25

◆ 社会医療診療行為別調査に関する整理案を提示
レセプト情報会議 医療保険行政に必要な基礎資料

――厚生労働省
厚生労働省は3月16日、「レセプト情報等の提供に関する有識者会議」を開催し、「社会医療診療行為別調査」に関する「整理の方向性」案を提示した。
社会医療診療行為別調査とは、厚生労働省が毎年、医療給付の受給者に係る診療行為の内容、傷病の状況、調剤行為の内容、薬剤使用状況等を明らかにして、医療保険行政に必要な基礎資料を得るために行う調査のこと。
調査対象は、保険医療機関および保険薬局のレセプトから、定められた抽出率に基づき支払基金および国保連合会によって抽出されたレセプトである。例年、6月審査分を対象に実施され、分析結果はその約1年後に公表されることが多い。

同調査は、統計法にもとづいて実施され、医科病院・調剤に関しては2011年度から、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)の全数を集計対象としており(医科診療所に関しては2013年度から、歯科病院は2014年度から、歯科診療所は2015年度から対象としている)、第三者提供の枠組みのなかで、その位置づけを整理する必要性が指摘されている。
また、この有識者会議は、厚労省が構築するNDBのデータについて、本来の目的(医療費適正化計画の作成など)以外に利用する申請があった場合、厚生労働大臣がデータ提供の可否を決定するにあたって助言をする役割を持っている。

以上の経緯から、同調査の情報によって実施されてきた省内部局からの要望に対する「特別集計」の扱いなどが主な論点とされ、整理の方向性案も、それらに沿う形で次の3項目が提示された(カッコ内は主な内容)。
(1)特別集計の扱い(従前同様、要望部局からの申し出を受けた統計情報部で特別集計を実施・提供することを、明示的に位置づけてはどうか)。
(2)研究者などへの集計用データの提供の扱い(可能な限り、従前の枠組みに近い形での整理を検討してはどうか)。
(3)最小単位の原則の適用(長年にわたって最小単位の原則を用いずに運用され、特段の問題がないことから、適用除外としてはどうか)。

そのほか今回は、「基本データセットの提供」も俎上にのぼり、「現在提供されているNDBデータの種類(基本的なイメージなど)」や「提供するデータの特性とセキュリティの確保」などについて示されている。

◆ 薬剤師不在時のOTC薬取扱いや広告基準見直しを討議
厚労省が見解 「患者が納得できるか否かがカギ」

――厚生労働省
薬局の店頭での、かかりつけ薬剤師による24時間対応、さらに在宅対応や患者との対話による患者情報の把握、薬剤師確保など薬局・ドラッグストア経営に難題が横たわっている。中でも患者対応は患者が店頭でしびれを切らしているだけに深刻だ。
内閣府が3月17日、規制改革会議の下部組織「健康・医療ワーキング・グループ(WG)」を開催し、(1)「薬局における薬剤師不在時の一般用医薬品の取り扱いの見直し」、(2)「一般用医薬品および指定医薬部外品の広告基準などの見直し」――に関し厚生労働省へ見解を求めた。
この2つのテーマに対して、これまでにも何度か直面し、今回の診療報酬改定でWGから指摘された事項について、厚労省はそれぞれ見解を示し「規制の見直し」へ舵を切ろうとしている。たとえば日本OTC医薬品協会が昨年12月、今年2月にも「OTC医薬品等の適正広告ガイドライン」と同程度に詳細かつ具体的に適正基準を解説した通知等を別途、厚労省へ要望書を提出している。
(1)については、いわゆる「OTC医薬品」の店頭での扱いのことを指している。OTCは医師に処方してもらう「医療用医薬品」ではなく、薬局やドラッグストアなどで自己管理、自己治療として自分で選び購入する「一般用医薬品」と「要指導医薬品」のこと。英語の「Over The Counter(オーバー・ザ・カウンター)」の略語で、対面販売で薬を買うことを意味している。これまで「大衆薬」や「市販薬」とも呼ばれていたが、最近、国際的表現の「OTC医薬品」という呼称が使われるようになっている。

(1)では、「薬剤師不在時に一定の条件のもとで、登録販売者が第2類、第3類の一般用医薬品を販売できるような規制の見直し」が指摘されている。それに対して厚労省は、次の点などに留意しながら、「規制の見直しを検討したい」との考えを示した。
○ かかりつけ薬剤師・薬局の役割をはたすことを前提とし、薬剤師の不在理由が、処方せんを持つ患者に納得できる、薬局の調剤応需体制の確保とのバランス。
○ 薬剤師不在時に、調剤を受けられない旨を患者にわかりやすく知らせる手段。
○ 薬剤師不在時で登録販売者が一般用医薬品を販売しようとする場合の、調剤室と調剤された薬剤の販売に関する設備を閉鎖するなどの措置。

(2)では、セルフメディケーションの推進やインターネットの活用などによって広告のあり方が変化している状況のもと、「現行の医薬品等適正広告基準のすみやかな見直し」を指摘されている。
それに対し厚労省は、「一般用医薬品広告の指導監査のあり方については、2016年度から検討の場を設け、一般用医薬品などの業界関係者の意見も聴取したうえで検討することを考えている」との意向を示した。

◆ 外来患者の診察までの待ち時間 「15分未満」が最多
厚労省 2014年「受療行動調査の結果」(確定数)

――厚生労働省
厚生労働省は3月16日、2014(平成26)年「受療行動調査の結果」(確定数)を公表した。
調査は、医療施設を利用する患者に対し、医療を受けた時の状況や満足度などを調査し、今後の医療行政の基礎資料を得ることを目的としたもの。調査日程は平成26年10月21日(火)~23日(木)の3日間のうち医療施設ごとに指定した1日。患者とは平成26年医療施設静態調査の外来患者延数と在院患者数及び平成26年患者調査の外来患者、入院患者の年齢構成を用いて全国推計を行ったものの確定数をいう。

調査事項:
○ 外来患者票…診察等までの待ち時間、診察時間、来院の目的、診察・治療・検査などの内容、初めて医師に診てもらったときの自覚症状、医師から受けた説明の程度、病院を選んだ理由、入院の有無、外来の受診頻度、満足度等
○ 入院患者票…病院を選んだ理由、緊急入院・予定入院、入院までの期間、医師から受けた説明の程度、今後の治療・療養の希望、満足度等

調査の方法:
患者への調査票の配布は、外来患者票、入院患者票ともに医療施設において調査員が行った。
病院の表章区分は次の区分で行った
 特定機能病院…医療法第4条の2に規定する特定機能病院として厚生労働大臣の承認を得ている病院
 大病院…特定機能病院、療養病床を有する病院を除いた一般病院で、病床規模が500床以上の病院
 中病院…特定機能病院、療養病床を有する病院を除いた一般病院で、病床規模が100床~499床の病院
 小病院…特定機能病院、療養病床を有する病院を除いた一般病院で、病床規模が20床~99床の病院
 療養病床を有する病院…医療法第7条第2項第4号に規定する病院の病床であって、主として長期にわたり療養を必要とする患者を入院させるための病床を有する病院

《調査結果の概要》
外来患者の診察等までの待ち時間は「15分未満」が25.0%と最も多く、次いで、「15~30分未満」が24.1%、「30分~1時間未満」が20.4%となっており、1時間未満の割合が多かった。診察時間は「3~10分未満」が51.8%と最も多く、次いで、「3分未満」が16.3%、「10~20分未満」が14.0%だった。
また、病院の種類別では、特定機能病院、大病院、中病院の初診では「15~30分未満」、再来では「15分未満」が最多。小病院および療養病床を有する病院では、初診、再来とも「15分未満」が最多だった。

他方、入院患者の入院時の状況は、「緊急入院(外来を受診してすぐ)または救急搬送」が41.6%、「予定入院(予約をしてからの入院)」は56.4%となっている。
「予定入院(予約をしてからの入院)」との回答について、入院までの期間(入院が必要と診断されてから実際に入院するまでの期間)は、「1週間未満」が39.3%と最も多く、次いで、「1週間~1カ月未満」が34.7%、「1~6カ月未満」が15.8%となっている。
なお、1週間以上かかった理由は、特定機能病院、大病院では「手術や検査の予約が取れない」が、中病院、小病院では「自分や家族の都合等」、療養病床を有する病院では「ベッドが空いていない」が、それぞれ最多だった。

主な傷病分類別における自覚症状について、「自覚症状がなかった」は、「新生物」で43.8%、「内分泌、栄養および代謝疾患」で43.2%と高くなっている。悪性新生物で「自覚症状がなかった」が多かったものは、「気管、気管支および肺の悪性新生物」が57.9%、「肝および肝内胆管の悪性新生物」が56.2%、「前立腺の悪性新生物」が56.0%だった。
◆ 検討会報告書と検討会の運営見直しを提案 緩和ケア検討会
特に求められる「外来患者に対する緩和ケアの充実」

――厚生労働省
厚生労働省は3月16日、「緩和ケア推進検討会」を開催し、(1)緩和ケア推進検討会報告書案、(2)今後の緩和ケアのあり方案―について議論した。緩和ケアについては、「【緩和ケア診療加算】を算定する拠点病院が半数に満たない」、「身体的・精神的・心理的苦痛の緩和が十分に行われていないがん患者が3~4割いる」などの課題があり、特に外来患者に対する緩和ケアの充実が求められている。

緩和ケアについては2014年の3月、同検討会の下部にWG(ワーキンググループ)が設けられ実地調査が行われた。目的は「拠点病院の緩和ケア提供体制における実地調査」だった。この調査結果の報告は「がん患者とその家族への適切な緩和ケアの提供の達成度にはばらつきがある」、しかし「全体としては極めて不十分と言っても過言ではない」とマイナス点のついた総括だった。このため検討会委員から「継続して調査すべき」、「抜き打ち検査も必要」などと厳しく対処すべきとの声が相次いだ―という経緯が現在まで引きずっていて、それが「検討会の見直し」の布石となったとされる。
そこで今後検討すべき課題は、①「拠点病院の緩和ケア提供体制のあり方」、②「拠点病院以外の医療機関の緩和ケア提供体制のあり方」、③「すべての医療従事者が基本的な緩和ケアを身につけるための方策」に重点を置くと決まった。
この日、厚労省は、がん対策加速化プランについて(報告)、緩和ケア推進検討会報告書(案)提出、今後の緩和ケアのあり方について(案)提出を行った。特に検討会の内容や実地調査の結果を踏まえ、拠点病院の緩和ケア、都道府県拠点病院の緩和ケアセンター、緩和ケア人材育成などについて現状把握、課題、実施すべき取り組みをまとめている。

(1)の報告書では、実施すべき取り組みとして「緩和ケア研修会」があげられている。これは、2008年に開始し、医師・歯科医師に緩和ケアの知識・技術の普及を行うもの。2014年9月の時点で、拠点病院でがん患者の主治医・担当医になる者で、研修を終了したのは約33%だった。そのため、各拠点病院が2017年6月までに、9割以上が受講完了するという目標達成に向けた研修終了計画書を厚労省に提出したと報告した。
そこで、今後検討すべき課題として厚労省は、「拠点病院の緩和ケア提供体制のあり方(緩和ケアセンターの運営や苦痛のスクリーニングの実施体制など)」、「拠点病院以外の医療機関の緩和ケア提供体制のあり方」、「すべての医療従事者が基本的な緩和ケアを身につけるための方策」をあげた。

(2)では緩和ケアの現状と課題に関し、約4分の3のがん患者は拠点病院以外で看取られているため、拠点病院以外の医療機関の緩和ケア充実の重要性をあげた。さらに、中小病院などは、がん以外の患者も多いと推測され、WHOの定義では、緩和ケアの対象患者は特定の疾患に限らないと報告。がん患者の緩和に加え、心血管疾患患者などの緩和ケアの検討が必要と指摘した。これらを踏まえ、厚労省は今後の議論の進め方について、「検討会の運営を見直す」ことを提案した